「相続税対策としてアパート経営が有効」と聞いたことはあっても、「本当に節税になるのか」「リスクはないのか」と疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。実際、現金や土地をそのまま相続するよりも、賃貸アパートとして活用することで相続税評価額を下げられる可能性があり、地主や資産家を中心に注目されてきました。
しかし、節税効果ばかりに目を向けてしまうと、空室リスクや修繕費、税制改正などの影響を見落としてしまうこともあります。特に近年は、相続直前の不動産取得による節税を抑える制度見直しが進んでおり、「とりあえずアパートを建てれば安心」という時代ではなくなりつつあります。
本記事では、アパート経営が相続税対策として注目される理由から、評価額が下がる仕組み、具体的な節税シミュレーション、2026年税制改正のポイントまでをわかりやすく解説します。さらに、メリットだけでなくリスクや失敗しないためのポイントも整理しながら、どのような人に向いている対策なのかを総合的に解説していきます。
※本記事に掲載されている情報は、2026年3月時点の税制および関連法令に基づいた一般的な解説です。実際の相続対策にあたっては、必ず税理士や弁護士、不動産鑑定士などの専門家に相談し、最新の情報に基づいた具体的なシミュレーションを行ったうえで、ご自身の責任において最終的な判断を行ってください。
- アパート経営で相続税対策が注目される理由
- 相続税対策としてアパート経営が有効とされる3つの仕組み
- 土地評価が下がる「貸家建付地」とは
- 建物評価が下がる「貸家評価」の仕組み
- 借入金による債務控除で相続財産を圧縮できる理由
- 小規模宅地等の特例でさらに評価額を下げる方法
- アパート経営による相続税対策の節税シミュレーション
- アパート経営で相続税対策を行うメリット
- アパート経営による相続税対策のデメリットとリスク
- 【重要】2026年税制改正で変わるアパート相続税対策の「5年ルール」
- 税制改正後でもアパート経営の相続税対策が有効なケース
- 相続税対策として失敗しないアパート経営のポイント
- アパート経営による相続税対策はどんな人に向いているのか
- まとめ|アパート経営による相続税対策のポイント
アパート経営で相続税対策が注目される理由
アパート経営が相続税対策として注目される最大の理由は、現金や預貯金のまま資産を持つよりも、相続税評価額を下げやすいからです。現金1億円は相続時にそのまま1億円として評価されますが、土地の上に賃貸アパートを建てたり、賃貸用不動産を取得したりすると、相続税の計算に使われる評価額は時価より低くなるのが一般的です。つまり、同じ1億円の資産でも、持ち方を変えるだけで課税対象額を圧縮できる可能性があるため、多くの地主や資産家が関心を寄せています。
もう一つの理由は、節税だけでなく納税資金の準備にもつながる点です。相続税は原則として現金で納める必要があります。そのため、資産の多くが土地に偏っている家庭では、相続税そのものよりも「納税資金をどう確保するか」が大きな課題になりやすいです。アパート経営であれば、家賃収入を得ながら相続発生後の資金繰りにも備えやすくなります。節税と収益確保を同時に考えられることが、単なる節税スキームとは異なる注目点です。
さらに、近年は相続税の基礎控除縮小や不動産価格の上昇によって、以前なら相続税がかからなかった層にも課税が及びやすくなっています。特に都市部や人気エリアに土地を持つ人は、現金収入がそれほど多くなくても相続税評価額が高額になるケースがあります。このような背景から、土地を活かしながら相続税負担を抑える方法として、アパート経営が現実的な選択肢として検討されるようになりました。
アパート経営が注目される理由は、単に「税金が安くなるらしい」という話だけではありません。評価減の仕組み、借入金の債務控除、家賃収入による納税資金づくり、そして土地活用まで含めて総合的なメリットがあるからです。まずは、どの点が評価されているのかを整理すると全体像がつかみやすくなります。
- 現金より不動産のほうが相続税評価額を下げやすい
- 貸家建付地や貸家評価によって土地建物の評価が圧縮される
- アパートローンは債務控除の対象になりやすい
- 家賃収入で相続税の納税資金を準備しやすい
- 遊休地の活用と相続対策を同時に進められる
こうして見ると、アパート経営は相続税対策として一定の合理性があります。ただし、注目されているからといって、すべての人に向いているわけではありません。立地が悪ければ空室リスクが高まり、修繕費や管理費が収益を圧迫することもあります。相続税が下がっても、経営そのものが赤字になれば本末転倒です。そのため、注目度の高さの裏には「本当に得なのかを慎重に見極めたい」という強いニーズもあります。
特に最近は、2026年税制改正に関連する「5年ルール」への関心が高まっています。相続直前の駆け込み取得による節税が難しくなる方向で制度が見直されているため、以前のように「とりあえずアパートを買えばよい」という時代ではなくなりつつあります。現時点での確認では、今後は短期的な節税よりも、長期保有を前提とした収益性の高い不動産運用が重要になると見られています。
読者がこのテーマで知りたいのは、結局のところ「アパート経営は相続税対策として本当に意味があるのか」という一点に尽きます。その答えは、節税効果だけを見れば有効な場面が多い一方で、立地や資金計画、相続人の構成まで含めて判断しないと失敗しやすい、というものです。だからこそ、アパート経営は相続税対策として注目され続けています。期待できる効果が大きい反面、判断を誤ったときの影響も小さくないからです。
| 注目される理由 | 具体的な内容 | 確認すべき点 |
| 相続税評価額の圧縮 | 現金より不動産のほうが評価額を下げやすい | 土地評価や建物評価の計算方法を確認 |
| 納税資金の確保 | 家賃収入を相続税の支払い原資にしやすい | 空室率や実際の手残りを試算 |
| 借入の活用 | ローン残高が債務控除の対象になる | 返済負担と金利上昇リスクを確認 |
| 土地活用 | 使っていない土地を収益資産に転換できる | 賃貸需要の有無を調査 |
| 制度改正への関心 | 2026年改正で短期節税が難しくなる見込み | 長期保有前提で成り立つか検討 |
表からも分かる通り、アパート経営が注目される背景には、税金面だけでなく資産運用や相続実務の問題が重なっています。だからこそ、相続税対策としてのアパート経営を考える際は、節税額だけを比較するのではなく、将来の収支、空室リスク、修繕費、相続人同士の分けやすさまで含めて判断する必要があります。次の章では、こうした注目の背景を踏まえたうえで、なぜアパート経営が相続税対策として機能するのか、その仕組みを具体的に見ていきます。
相続税対策としてアパート経営が有効とされる3つの仕組み
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相続税対策としてアパート経営が有効とされるのは、税制上の評価方法によって相続財産の評価額を下げやすい仕組みがあるためです。現金や預貯金は額面どおりに評価されますが、不動産、とくに賃貸用不動産は一定の計算ルールによって評価額が圧縮される可能性があります。これにより、同じ資産価値であっても課税対象額を抑えることができるケースがあります。
具体的には、アパート経営による相続税対策は主に次の3つの仕組みによって成立しています。
- 土地の評価が下がる「貸家建付地」の仕組み
- 建物の評価が下がる「貸家評価」の仕組み
- 借入金を差し引ける「債務控除」の仕組み
これらの仕組みが組み合わさることで、現金で資産を保有する場合と比較して相続税の課税対象額を圧縮できる可能性があります。まずは、それぞれの仕組みを順番に見ていきましょう。
①土地評価が下がる「貸家建付地」
アパートが建っている土地は、相続税の計算では「貸家建付地」として評価されます。貸家建付地とは、第三者に貸している建物が建っている土地のことです。この場合、土地所有者が自由に使えない制約があるため、通常の更地よりも評価額が低くなります。
評価額は次の計算式で求められます。
土地評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合は全国一律で30%とされており、借地権割合は地域ごとに30〜70%程度で設定されています。そのため、条件によっては土地評価額が更地よりも20〜30%程度下がることがあります。
| 土地の状態 | 評価方法 | 評価額の目安 |
| 更地 | 自用地評価 | 100% |
| アパート用地 | 貸家建付地評価 | 70〜80%程度 |
このように、同じ土地でもアパートが建っているだけで評価額が下がる可能性があることが、相続税対策として注目される理由の一つです。
②建物評価が下がる「貸家評価」
建物の相続税評価額は、建築費ではなく固定資産税評価額を基準に算出されます。一般的に固定資産税評価額は建築費の50〜70%程度になることが多いため、建物だけでも時価より低く評価されます。
さらに、アパートのような賃貸物件は「貸家」として評価されるため、借家権割合を考慮した評価減が適用されます。計算式は次の通りです。
建物評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合は全国一律で30%です。満室に近い状態であれば、建物評価額はさらに下がることになります。
| 項目 | 評価基準 | 評価割合の目安 |
| 建築費 | 実際の建築価格 | 100% |
| 固定資産税評価額 | 税務上の評価 | 50〜70% |
| 貸家評価後 | 借家権割合考慮 | 40〜50%程度 |
このように、土地と建物の両方で評価額が圧縮される点が、アパート経営による相続税対策の大きな特徴です。
③借入金を差し引ける「債務控除」
アパートを建てる際に金融機関からローンを借りた場合、その借入金残高は相続財産から差し引くことができます。これを「債務控除」と呼びます。ポイントは、不動産の評価額は低く評価される一方で、借入金は額面どおりに控除される点です。
たとえば1億円のアパートをローンで建てた場合を考えてみましょう。建物や土地の評価額が合計で6,000万円程度に下がったとしても、借入金が1億円残っていれば、その差額はマイナス財産として計算されます。
| 項目 | 金額例 |
| 不動産の相続税評価額 | 6,000万円 |
| 借入金残高 | 1億円 |
| 課税対象財産 | −4,000万円(控除可能) |
もちろん、実際の相続税計算では他の財産との合算や基礎控除が関係するため単純ではありませんが、借入金を活用することで課税財産を圧縮できる可能性があることは重要なポイントです。
以上の3つの仕組みが組み合わさることで、アパート経営は相続税対策として有効とされてきました。ただし、空室が多い場合は賃貸割合が下がり評価減が小さくなるなど、条件によって効果は大きく変わります。さらに、2026年税制改正では相続直前の不動産取得に対する評価方法が見直される方向で議論が進んでおり、短期的な節税目的のアパート購入は以前ほど効果が期待できない可能性があります。
そのため、相続税対策としてアパート経営を検討する場合は、単なる節税だけでなく、賃貸需要や長期的な収益性も含めて総合的に判断することが重要です。
土地評価が下がる「貸家建付地」とは

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相続税対策としてアパート経営が注目される大きな理由の一つが、「貸家建付地(かしやたてつけち)」という土地評価の仕組みです。貸家建付地とは、アパートや賃貸マンションなど、第三者に貸している建物が建っている土地のことを指します。このような土地は、所有者が自由に利用できないという制約があるため、相続税の評価額が通常の土地より低く算定される仕組みになっています。
一般的に、土地をそのまま保有している場合は「自用地」として評価されます。自用地とは、所有者が自由に使える土地のことで、相続税評価額は路線価や倍率方式に基づいて計算されます。一方で、その土地に賃貸アパートが建っている場合は貸家建付地として扱われ、借地権割合や借家権割合を考慮して評価額が減額されます。
つまり、同じ土地でも利用方法によって相続税評価額が変わるということです。現金のまま保有するよりも、不動産として活用することで評価額を圧縮できる可能性があるため、多くの地主が土地活用と相続税対策を同時に検討する理由になっています。
貸家建付地の評価額は、次のような計算式で求められます。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
ここで重要になるのが「借地権割合」と「借家権割合」です。借家権割合は全国一律で30%と定められており、借地権割合は地域ごとに30%〜70%程度の範囲で設定されています。賃貸割合は、建物のうち実際に賃貸されている割合を指します。満室に近い状態であれば評価減の効果が大きくなります。
具体的なイメージを整理すると、次のようになります。
| 土地の利用状況 | 評価方法 | 評価額の目安 |
| 更地(自用地) | 路線価や倍率方式で計算 | 100% |
| 貸家建付地(アパート用地) | 借地権割合・借家権割合を考慮 | 70〜80%程度 |
たとえば、自用地としての評価額が1億円の土地にアパートを建てた場合を考えてみましょう。借地権割合が60%の地域で、借家権割合30%、賃貸割合100%とすると、土地評価額は次のようになります。
1億円 ×(1 − 0.6 × 0.3 × 1.0)= 約8,200万円
このように、同じ土地でもアパートを建てて賃貸しているだけで、評価額が約18%程度下がる可能性があります。これが、相続税対策として土地活用が検討される理由の一つです。
ただし、この評価減の効果は賃貸状況によって変わります。空室が多くなると賃貸割合が下がり、評価額の減額効果も小さくなります。そのため、相続税対策としてアパートを建てる場合は、単に建物を建てるだけではなく、安定した賃貸経営を維持することが重要になります。
貸家建付地の評価減のポイントを整理すると、次のようになります。
- 賃貸用建物が建っている土地は貸家建付地として評価される
- 所有者が自由に使えないため土地評価額が下がる
- 借地権割合・借家権割合・賃貸割合によって評価減が決まる
- 満室に近いほど評価減の効果が大きくなる
- 空室が増えると評価減が小さくなる可能性がある
このように、貸家建付地の仕組みはアパート経営による相続税対策の基本となる考え方です。ただし、2026年税制改正による評価ルールの見直しなど、制度の変更によって節税効果が変わる可能性も指摘されています。現時点での確認では、短期的な節税目的の不動産取得は以前ほど効果が期待できないケースもあるため、長期的な視点で土地活用を考えることが重要です。
次の章では、土地だけでなく建物の評価額も下がる「貸家評価」の仕組みについて詳しく解説していきます。
建物評価が下がる「貸家評価」の仕組み

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相続税対策としてアパート経営が有効とされる理由は、土地だけでなく建物の評価額も下がるためです。ここで押さえたいのが「貸家評価」という考え方です。自宅のように自分で使う建物ではなく、第三者に貸しているアパートや賃貸マンションは、所有者が自由に使えない分だけ相続税評価額が低くなります。これが、現金をそのまま持つ場合と比べて、相続税の課税対象額を抑えやすい理由です。
まず前提として、建物の相続税評価額は、建築費そのものではなく「固定資産税評価額」を基準に計算します。固定資産税評価額は、一般に建築費の50〜70%程度になることが多く、建てた瞬間から税務上の評価は時価より低くなりやすい傾向があります。さらに、その建物が賃貸用であれば、そこからもう一段階評価減を受けられるのが貸家評価のポイントです。
貸家評価の計算式は、次のように整理できます。
貸家の相続税評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
この式のうち、借家権割合は全国一律で30%です。賃貸割合は、建物全体のうち実際に賃貸されている部分の割合を指します。満室であれば100%に近くなり、空室が増えると割合は下がります。つまり、安定して入居があるアパートほど、貸家評価による相続税対策の効果も出やすいという構図です。
仕組みをイメージしやすいように、自用建物と貸家の違いを表にまとめます。
| 建物の種類 | 評価の考え方 | 評価額の目安 |
| 自宅など自用建物 | 固定資産税評価額で評価 | 建築費の50〜70%程度 |
| アパートなど貸家 | 固定資産税評価額から借家権相当分を減額 | 建築費の40〜50%程度になることもある |
たとえば、建築費1億円のアパートを建て、固定資産税評価額が6,000万円だったとします。この建物が満室に近い状態で、賃貸割合が100%であれば、貸家評価は次のようになります。
6,000万円 ×(1 − 0.3 × 1.0)= 4,200万円
この場合、実際には1億円をかけて建てた建物でも、相続税評価額は4,200万円まで下がる計算です。もちろん実際の固定資産税評価額や賃貸割合は物件ごとに異なりますが、建築費と相続税評価額の間に大きな差が生まれやすいことが分かります。
この差が、相続税対策としてのアパート経営の中核です。現金1億円はそのまま1億円で評価されますが、賃貸建物に組み替えると、税務上の評価額はかなり圧縮される可能性があります。しかも、家賃収入も得られるため、単なる評価減だけでなく納税資金の準備にもつなげやすい点が特徴です。
貸家評価のポイントは、次のように整理できます。
- 建物は建築費ではなく固定資産税評価額で評価される
- 固定資産税評価額は建築費より低くなりやすい
- 賃貸用建物は借家権割合30%を使ってさらに評価減できる
- 満室に近いほど賃貸割合が高くなり、評価減の効果も大きい
- 空室が多いと評価減の効果が弱くなる
一方で、貸家評価は「建てれば必ず大きく得をする」という単純な話ではありません。たとえば、相続時点で空室が多いと賃貸割合が下がり、評価減の効果は薄れます。さらに、建物の維持管理費や修繕費、入居募集のコストもかかります。税金だけを見れば有利でも、経営全体で赤字になれば意味がありません。相続税対策としてアパートを検討するなら、評価減と収益性を必ずセットで考える必要があります。
また、2026年税制改正で注目されている「5年ルール」の影響も無視できません。相続直前に取得・新築した賃貸用不動産は、従来のような評価圧縮が効きにくくなる方向で見直しが進んでいます。現時点での確認では、短期的な駆け込み対策よりも、長期保有を前提にした計画的な不動産活用の重要性が高まっています。貸家評価の仕組み自体は重要ですが、それだけで判断せず、保有期間や将来の相続時期も含めて考えることが大切です。
つまり、貸家評価の本質は「他人に貸しているため自由に使えない建物は、その分だけ評価を下げる」という税務上の考え方にあります。アパート経営による相続税対策を理解するうえでは、この建物評価の仕組みを押さえておくことが欠かせません。次の章では、さらに相続財産を圧縮する要素となる「借入金による債務控除」について詳しく見ていきます。
借入金による債務控除で相続財産を圧縮できる理由

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アパート経営が相続税対策として注目される理由の一つが、「債務控除」という仕組みです。債務控除とは、相続が発生した際に被相続人が抱えていた借入金などの負債を、相続財産から差し引くことができる制度です。つまり、資産だけでなく借金も相続の計算に含めることで、課税対象となる財産額を減らすことができます。
アパート経営では、多くの場合、金融機関からのアパートローンを利用して建物を建築したり購入したりします。この借入金は相続時点の残高がそのまま債務として扱われるため、相続財産から控除することが可能です。一方で、不動産の評価額は実際の購入価格より低く評価されることが多いため、資産と負債の評価の差によって課税対象額が圧縮されやすいという特徴があります。
具体的な仕組みを理解するために、簡単な例で考えてみましょう。
| 項目 | 金額例 |
| アパートの取得価格 | 1億円 |
| 相続税評価額(土地+建物) | 6,000万円 |
| 借入金残高 | 1億円 |
| 相続税計算上の課税財産 | −4,000万円(控除対象) |
この例では、1億円で取得したアパートの相続税評価額が6,000万円だった場合でも、借入金が1億円残っていれば、その差額分はマイナス財産として扱われます。実際の相続税計算では他の財産や基礎控除との合算が行われますが、この仕組みによって相続財産全体を圧縮できる可能性があります。
現金をそのまま保有している場合と比較すると、この違いはより分かりやすくなります。
| 資産の持ち方 | 資産評価 | 負債 | 課税対象 |
| 現金1億円 | 1億円 | 0円 | 1億円 |
| アパート経営(ローン利用) | 6,000万円 | 1億円 | 大幅に圧縮される可能性 |
このように、資産の評価額は低く、借入金はそのまま控除されるという評価の差が、相続税対策としてアパート経営が検討される理由の一つです。特に土地を多く持つ地主の場合、相続財産の評価額が高額になりやすいため、ローンを活用した資産組み替えが検討されるケースが少なくありません。
債務控除のメリットを整理すると、次のようになります。
- 借入金残高を相続財産から差し引くことができる
- 不動産は時価より低い評価になることが多い
- 資産と負債の評価差によって課税財産を圧縮できる可能性がある
- 家賃収入でローン返済と納税資金を確保しやすい
ただし、借入を利用した相続税対策には注意点もあります。借入金は税務上は控除できますが、実際の返済義務は相続人が引き継ぐことになります。つまり、節税効果だけを目的に過剰な借入を行うと、将来的に家賃収入で返済しきれないリスクもあります。空室が増えたり、修繕費が増えたりすると、収支が悪化する可能性もあるためです。
また、近年は税制改正の影響もあり、相続直前に不動産を購入して節税する手法への規制が強化されています。2026年税制改正では、相続前の一定期間内に取得した賃貸用不動産について評価方法の見直しが行われる方向で議論されており、短期的な節税目的の借入による不動産取得は以前ほど効果が期待できない可能性があります。現時点での確認では、今後は長期的な資産運用としての不動産活用がより重要になると考えられています。
このように、借入金による債務控除は相続財産を圧縮する有効な仕組みですが、単純に借入を増やせばよいというものではありません。相続税対策としてアパート経営を検討する際は、節税効果だけでなく、賃貸需要や長期的な返済計画を含めた総合的な資金計画を立てることが重要です。
小規模宅地等の特例でさらに評価額を下げる方法
相続税対策としてアパート経営を検討する際に、非常に重要な制度が「小規模宅地等の特例」です。この特例を利用すると、一定の条件を満たした土地について相続税評価額を大幅に下げることができます。アパート用地の場合は「貸付事業用宅地等」に該当し、最大200㎡まで土地評価額を50%減額できる仕組みです。すでに貸家建付地として評価額が下がっている土地でも、この特例を併用することで、さらに相続税評価額を圧縮できる可能性があります。
小規模宅地等の特例が注目される理由は、減額割合が非常に大きい点にあります。通常の相続税評価では土地の評価額は路線価などを基準に計算されますが、この特例を使うことで半分まで評価額を下げることができます。土地価格が高い都市部では、この特例の適用によって相続税額が大きく変わるケースも少なくありません。
貸付事業用宅地等に適用される小規模宅地等の特例の概要を整理すると、次のようになります。
| 区分 | 対象土地 | 減額割合 | 適用面積 |
| 貸付事業用宅地等 | アパート・賃貸マンションの敷地 | 50%減額 | 最大200㎡まで |
たとえば、相続税評価額が8,000万円のアパート用地があった場合、小規模宅地等の特例を適用すると評価額は次のようになります。
8,000万円 × 50% = 4,000万円
このように、評価額が半分になることで、相続税の課税対象額も大きく減る可能性があります。貸家建付地の評価減と組み合わせることで、土地の評価額は大きく圧縮されるケースもあります。
ただし、この特例を利用するためにはいくつかの条件があります。主なポイントは次の通りです。
- 被相続人が生前に賃貸事業を行っていたこと
- 相続人がその事業を引き継ぐこと
- 相続税の申告期限まで土地を保有していること
- 相続開始前3年以内に新しく貸し出した土地は原則対象外(例外あり)
特に注意したいのが「3年以内貸付宅地等」と呼ばれるルールです。相続直前に土地を購入してアパートを建て、短期間で節税することを防ぐため、一定の条件を満たさない場合は特例の適用が認められない可能性があります。この点は税制改正によってルールが変わることもあるため、最新の制度を確認することが重要です。
小規模宅地等の特例の効果を整理すると、次のようになります。
- アパート用地の相続税評価額を最大50%減額できる
- 貸家建付地の評価減と組み合わせることで節税効果が大きくなる
- 土地価格が高い都市部ほど効果が出やすい
- 事業継続や保有期間などの条件を満たす必要がある
この制度は相続税対策の中でも特に影響が大きい特例の一つですが、条件を満たさなければ適用できません。また、アパート経営が赤字になってしまえば、本来の資産対策としては本末転倒です。節税効果だけに注目するのではなく、長期的に安定した賃貸経営ができるかどうかを含めて判断することが重要です。
相続税対策としてアパートを検討する場合、小規模宅地等の特例は非常に強力な制度ですが、適用条件や将来の税制変更にも注意が必要です。実際に利用する際には、税理士などの専門家と相談しながら具体的な相続シミュレーションを行うことが望ましいでしょう。
アパート経営による相続税対策の節税シミュレーション
アパート経営による相続税対策の効果を理解するには、実際の数字でシミュレーションしてみるのが最も分かりやすい方法です。ここでは、現金をそのまま相続した場合と、アパート経営を行った場合を比較しながら、どのように相続税評価額が変わるのかを見ていきます。なお、ここで紹介する数値はあくまで一般的な例であり、実際の税額は土地の路線価や借地権割合、賃貸状況などによって大きく変わります。
まずは、現金で資産を保有しているケースを考えてみましょう。現金は額面どおりに評価されるため、1億円の資産はそのまま1億円として相続税の対象になります。
| 資産の種類 | 評価方法 | 相続税評価額 |
| 現金 | 額面評価 | 1億円 |
この場合、法定相続人の人数や基礎控除によって実際の税額は変わりますが、課税対象となる財産は基本的にそのままの金額になります。つまり、現金は節税の余地がほとんどない資産だと言えます。
次に、同じ1億円の資産を使ってアパートを建てたケースを見てみましょう。アパートの場合は、土地と建物がそれぞれ異なる評価方法で計算されます。さらに貸家建付地や貸家評価の仕組みによって、相続税評価額が下がる可能性があります。
| 項目 | 金額例 | 評価の考え方 |
| 土地の時価 | 5,000万円 | 貸家建付地として評価減 |
| 建物建築費 | 5,000万円 | 固定資産税評価額ベースで計算 |
| 土地の評価額 | 約4,000万円 | 貸家建付地評価 |
| 建物の評価額 | 約2,500万円 | 貸家評価 |
| 合計評価額 | 約6,500万円 | 時価より低い評価 |
この例では、1億円の資産をアパートに組み替えることで、相続税評価額が約6,500万円まで下がる計算になります。つまり、現金のまま相続する場合と比較すると、課税対象となる財産が約3,500万円減る可能性があります。
さらに、アパートローンを利用して建築した場合は、債務控除によって相続財産をさらに圧縮できる可能性があります。たとえば、建築費の大部分を借入で賄っている場合、次のような形になります。
| 項目 | 金額例 |
| 不動産評価額 | 6,500万円 |
| 借入金残高 | 8,000万円 |
| 相続税計算上の財産 | 大幅に圧縮される可能性 |
このように、不動産は評価額が低く計算される一方で、借入金はそのまま控除されるため、資産と負債の評価差によって相続財産が圧縮される仕組みになります。これが、アパート経営が相続税対策として検討される理由の一つです。
さらに、小規模宅地等の特例を適用できる場合は、土地の評価額が最大50%減額される可能性もあります。土地価格が高い地域では、この特例の影響が非常に大きくなるケースもあります。
アパート経営による相続税対策の節税効果を整理すると、次のようなポイントが挙げられます。
- 土地は貸家建付地として評価額が下がる
- 建物は固定資産税評価額ベースで低く評価される
- 貸家評価によってさらに評価減が適用される
- 借入金は債務控除として差し引ける
- 小規模宅地等の特例で土地評価をさらに減額できる可能性がある
ただし、ここで紹介したシミュレーションはあくまで一般的な例です。土地の立地、借地権割合、空室率、建物の評価額などによって結果は大きく変わります。また、2026年税制改正では、相続直前に取得した賃貸用不動産の評価方法が見直される方向で制度変更が検討されています。そのため、短期間で節税を狙う方法は以前ほど効果が期待できない可能性があります。
相続税対策としてアパート経営を検討する場合は、単純な節税額だけを見るのではなく、長期的な賃貸経営の収支や資産価値も含めて判断することが重要です。税理士や不動産の専門家と相談しながら、具体的な相続税シミュレーションを行うことが望ましいでしょう。
アパート経営で相続税対策を行うメリット
アパート経営は、相続税対策の中でも比較的広く知られている方法の一つです。理由は、税制上の評価ルールを活用することで相続税評価額を圧縮できる可能性があるだけでなく、賃貸収入という実際のキャッシュフローも生み出せる点にあります。単に税金を減らすだけでなく、資産運用や土地活用を同時に進められることから、多くの地主や資産家が検討する対策となっています。
特に、都市部や人口の多いエリアでは土地価格が高いため、相続税評価額も大きくなりやすい傾向があります。このような土地をそのまま保有するよりも、アパートとして活用することで税務上の評価額を下げられる可能性があり、相続税の負担軽減につながる場合があります。
ここでは、アパート経営による相続税対策の代表的なメリットを整理して解説します。
相続税評価額を圧縮できる可能性がある
アパート経営の最大のメリットは、相続税評価額を下げやすい点です。土地は「貸家建付地」として評価され、建物は「貸家評価」が適用されるため、現金や更地のまま保有する場合と比べて評価額が低くなる可能性があります。
| 資産の種類 | 評価方法 | 評価額の特徴 |
| 現金 | 額面評価 | 100%そのまま評価 |
| 更地 | 路線価評価 | 比較的高い評価 |
| アパート用地 | 貸家建付地評価 | 更地より低い評価 |
| アパート建物 | 固定資産税評価額+貸家評価 | 建築費より低い評価 |
この評価方法の違いによって、相続税の課税対象額が圧縮される可能性があります。
家賃収入で納税資金を確保できる
相続税は原則として現金で納税する必要があります。しかし、資産の多くが土地の場合、納税資金を準備することが難しいケースもあります。アパート経営を行っていれば、家賃収入が継続的に得られるため、相続税の納税資金として活用できる可能性があります。
特に地主の場合、「資産は多いが現金収入が少ない」という状況が起こりやすいため、賃貸経営による収入源を確保することは重要なポイントになります。
借入金による債務控除を利用できる
アパート建築や購入の際に金融機関から借入を行った場合、その借入金残高は相続財産から控除することができます。これを債務控除と呼びます。不動産の評価額は時価より低くなることが多い一方で、借入金は額面で控除されるため、課税対象となる財産を圧縮できる可能性があります。
この仕組みにより、資産と負債の評価差が生まれ、結果として相続税の負担を軽減できるケースがあります。
土地の有効活用につながる
使っていない土地をそのまま所有していると、固定資産税だけがかかる「負担資産」になってしまう場合があります。アパートを建てて賃貸経営を行うことで、土地を収益資産に変えることができる点も大きなメリットです。
土地の有効活用としてのアパート経営には、次のような利点があります。
- 遊休地を収益資産に変えられる
- 長期的な家賃収入が期待できる
- 資産の分散によるリスク分散
- 相続後も資産として残せる
資産承継をスムーズに進めやすい
不動産は長期的に保有できる資産であり、次の世代へ引き継ぐ資産としても活用できます。特にアパート経営の場合、家賃収入という収益源があるため、相続人にとっても継続的な収入資産になる可能性があります。
ただし、共有状態で相続すると管理や売却が難しくなる場合もあるため、遺言書や相続計画を事前に準備しておくことが重要です。
メリットを整理すると
アパート経営による相続税対策のメリットをまとめると、次のようになります。
- 相続税評価額を圧縮できる可能性がある
- 家賃収入によって納税資金を確保できる
- 借入金の債務控除を利用できる
- 土地を収益資産として有効活用できる
- 長期的な資産承継がしやすい
ただし、アパート経営はあくまで不動産投資であり、空室リスクや修繕費などの経営リスクも伴います。また、2026年税制改正では相続直前の不動産取得による節税対策が見直される方向で制度変更が議論されています。そのため、短期的な節税目的だけでなく、長期的な賃貸経営として成り立つかどうかを慎重に検討することが重要です。
次の章では、こうしたメリットの裏側にある「アパート経営による相続税対策のデメリットやリスク」について詳しく解説していきます。
アパート経営による相続税対策のデメリットとリスク

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アパート経営は相続税対策として有効な手段とされることがありますが、メリットだけを見て判断するのは危険です。不動産は長期的な資産運用であるため、税金の面だけでなく経営リスクや資産価値の変動も考慮する必要があります。実際には、節税目的だけでアパートを建てた結果、収支が悪化したり相続トラブルにつながったりするケースもあります。ここでは、相続税対策としてアパート経営を検討する際に必ず理解しておきたい主なデメリットとリスクを解説します。
空室リスクによる収入減少
アパート経営の最大のリスクは空室です。入居者がいなければ家賃収入は発生せず、ローン返済や維持費だけが残る可能性があります。特に人口減少が進む地域では賃貸需要が減ることもあり、想定していた収益が得られないケースも少なくありません。
また、空室が増えると家賃収入が減るだけでなく、相続税評価にも影響します。賃貸割合が下がると貸家評価の減額効果が小さくなり、結果として相続税評価額が高くなる可能性があります。
- 空室が増えると家賃収入が減少する
- ローン返済や管理費は固定費として残る
- 賃貸割合が下がると相続税評価の減額効果が小さくなる
修繕費や維持費が長期的に発生する
アパートは建てて終わりではなく、長期的な維持管理が必要です。建物は年数が経つにつれて修繕費が増えていきます。外壁塗装、屋根補修、設備交換などの費用は数十万から数百万円単位になることもあります。
| 主な修繕内容 | 発生時期の目安 | 費用の目安 |
| 外壁塗装 | 10〜15年 | 100万〜300万円 |
| 屋根補修 | 15〜20年 | 50万〜200万円 |
| 設備交換(給湯器など) | 10年前後 | 数十万円 |
このように、長期保有を前提とするアパート経営では、将来の修繕費を見越した資金計画が必要になります。
相続トラブル(争族)の原因になる可能性
不動産は現金と違って簡単に分割できないため、相続トラブルの原因になることがあります。兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合、共有状態になると意思決定が難しくなるケースがあります。
- 売却するかどうかで意見が分かれる
- 管理費や修繕費の負担割合で揉める
- 共有名義だと将来の売却が難しくなる
こうした問題を防ぐためには、遺言書の作成や資産分割の計画を事前に考えておくことが重要です。
不動産価格の下落リスク
不動産は市場の影響を受ける資産です。人口減少や地域経済の変化により、将来の資産価値が下がる可能性があります。購入時には高値だった物件でも、売却時には大きく値下がりしているケースもあります。
節税だけを目的に立地条件の悪い土地にアパートを建ててしまうと、売却が難しくなる可能性があります。相続後に資産整理をしたい場合でも、買い手が見つからないこともあるため注意が必要です。
税制改正による影響
相続税対策としての不動産活用は、税制改正の影響を受けることがあります。特に近年は、相続直前の不動産取得による節税対策への規制が強化されています。2026年税制改正では、相続前5年以内に取得した賃貸用不動産の評価方法が見直される方向で議論されています。
この変更により、相続直前にアパートを購入して評価額を下げるという短期的な節税手法は効果が小さくなる可能性があります。今後は長期的な不動産運用として成立するかどうかが重要な判断基準になります。
主なリスクを整理すると
| リスク | 内容 |
| 空室リスク | 入居者が減ると家賃収入が減少 |
| 修繕費 | 長期的に多額のメンテナンス費用が発生 |
| 相続トラブル | 不動産は分割しにくく争いの原因になる |
| 資産価値の下落 | 地域によっては売却が難しくなる |
| 税制変更 | 節税効果が将来変わる可能性がある |
このように、アパート経営による相続税対策には多くのメリットがある一方で、無視できないリスクも存在します。特に「節税できるから」という理由だけで建築を決めると、将来的に経営が成り立たなくなる可能性があります。重要なのは、税金だけでなく収益性や立地、相続後の資産管理まで含めて総合的に判断することです。
次の章では、2026年税制改正で注目されている「5年ルール」の内容と、その影響について詳しく解説していきます。
【重要】2026年税制改正で変わるアパート相続税対策の「5年ルール」
相続税対策としてアパート経営を検討している人にとって、2026年(令和8年)税制改正で導入されるとされる「5年ルール」は非常に重要なポイントです。これまで相続税対策では、相続直前に賃貸不動産を購入したりアパートを建てたりすることで、相続税評価額を大きく下げる方法が広く知られていました。しかし、このような「駆け込み節税」を防ぐため、評価方法が見直される方向で制度改正が進められています。
新しいルールでは、相続開始前5年以内に取得・新築した賃貸用不動産について、従来の路線価や固定資産税評価額をベースとした評価ではなく、原則として取得価格(時価)ベースで評価される仕組みが導入される予定です。これにより、相続直前に不動産を購入して評価額を下げる節税手法は大きく制限される可能性があります。
これまでの評価方法
従来の相続税評価では、賃貸不動産は市場価格より低い評価になるケースが多くありました。主な理由は次の通りです。
- 土地は路線価ベースで評価される(時価より低いことが多い)
- 貸家建付地として土地評価がさらに減額される
- 建物は固定資産税評価額で計算される
- 貸家評価によって建物評価も下がる
この仕組みを利用することで、同じ1億円の資産でも不動産に組み替えることで評価額が6割程度まで下がるケースもありました。
2026年改正後の評価の考え方
2026年税制改正では、相続直前の不動産取得による過度な節税を防ぐため、評価方法が変更されます。主なポイントを整理すると次の通りです。
| 項目 | 改正前 | 改正後(予定) |
| 対象不動産 | すべての賃貸不動産 | 相続前5年以内に取得・新築した賃貸不動産 |
| 評価方法 | 路線価・固定資産税評価額 | 取得価格(時価)ベース |
| 節税効果 | 大きい | 大幅に縮小 |
つまり、相続が近いタイミングでアパートを購入しても、従来のように評価額を大きく下げることは難しくなる可能性があります。
なぜこのルールが導入されるのか
この制度改正の背景には、いわゆる「不動産節税スキーム」の拡大があります。これまで一部では、相続直前に不動産を購入し、評価額を大きく下げることで相続税を極端に減らすケースが問題視されていました。こうした税負担の不公平を是正するため、取得価格ベースの評価を導入することで短期的な節税を防ぐ狙いがあります。
5年ルールの影響を整理すると
今回の制度変更によって、相続税対策としての不動産活用の考え方も変わる可能性があります。主な影響は次の通りです。
- 相続直前のアパート購入による節税は難しくなる
- 長期保有を前提とした不動産投資が重要になる
- 節税だけでなく収益性も重視される
- 早めの資産組み替えが必要になるケースがある
特に注意したいのは、「相続が近いから急いでアパートを買う」という対策が通用しにくくなる点です。場合によっては、取得価格ベースで評価されるため、かえって相続税の負担が大きくなる可能性もあります。
改正後でもアパート相続税対策は完全に無効ではない
ただし、この税制改正によってアパート経営による相続税対策が完全に無効になるわけではありません。取得から5年以上保有している不動産については、従来通りの評価方法が適用される可能性があります。そのため、長期的な資産計画として不動産を保有する場合には、依然として相続税対策としての効果が期待できるケースもあります。
| 保有期間 | 評価方法 | 節税効果 |
| 5年未満 | 取得価格ベース | 小さい |
| 5年以上 | 従来評価(路線価など) | 従来に近い効果 |
つまり、これからの相続税対策では「短期の節税」ではなく長期的な資産運用という視点がより重要になります。土地の活用やアパート経営を検討する場合は、相続時期や資産構成を踏まえたうえで、早い段階から計画を立てることが大切です。
次の章では、こうした制度変更を踏まえたうえで、税制改正後でも有効とされるアパート経営の相続税対策について解説していきます。
税制改正後でもアパート経営の相続税対策が有効なケース
2026年税制改正によって、相続直前に賃貸用不動産を取得して評価額を下げる「駆け込み節税」は大きく制限される見込みです。しかし、これはアパート経営による相続税対策が完全に無効になることを意味するわけではありません。制度の趣旨は短期的な節税スキームの抑制であり、長期的な不動産活用や賃貸事業そのものまで否定しているわけではないためです。
むしろ税制改正後は、長期的な資産運用としての不動産活用という本来の形であれば、引き続き相続税対策として有効になるケースがあります。ここでは、税制改正後でもアパート経営が相続税対策として機能する代表的なケースを整理します。
① 相続まで5年以上の期間がある場合
今回の制度変更で特に影響を受けるのは、相続前5年以内に取得した賃貸用不動産です。逆に言えば、取得から5年以上経過している不動産であれば、従来に近い評価方法が適用される可能性があります。
つまり、相続がまだ先である場合には、早めに資産を組み替えることで従来と同様の評価減効果を得られるケースがあります。
| 不動産取得時期 | 評価方法 | 節税効果 |
| 相続前5年以内 | 取得価格ベース | 小さい |
| 5年以上前 | 路線価など従来評価 | 比較的大きい |
そのため、相続税対策としてアパート経営を検討する場合は、短期ではなく10年〜20年単位の長期計画として考えることが重要になります。
② もともと土地を所有している場合
すでに土地を持っている地主の場合、その土地にアパートを建てることで相続税評価額を下げられる可能性があります。土地は貸家建付地として評価され、建物も貸家評価が適用されるため、現金で資産を持つ場合と比べて相続税評価額が下がるケースがあります。
特に都市部では土地価格が高いため、評価減の効果が大きくなる場合があります。
- 遊休地を収益資産に変えられる
- 貸家建付地評価で土地評価が下がる
- 貸家評価で建物評価も下がる
- 小規模宅地等の特例が適用できる可能性がある
このようなケースでは、税制改正後でも相続税対策として一定の効果が期待できます。
③ 収益性の高い物件を長期保有する場合
税制改正後は「節税目的の不動産購入」よりも「収益性の高い賃貸事業」が重要になります。つまり、家賃収入が安定している物件であれば、相続税対策と資産運用を両立できる可能性があります。
| 物件タイプ | 相続税対策としての適性 | 理由 |
| 賃貸需要が高い都市部 | 高い | 空室リスクが低く収益が安定 |
| 人口減少エリア | 低い | 空室リスクが高い |
| 駅近・大学近く | 比較的高い | 賃貸需要が長期的に見込める |
つまり、税制改正後は節税効果だけでなく、物件の収益性や立地がより重要になります。
④ 小規模宅地等の特例が利用できる場合
アパート経営を行っている土地については、小規模宅地等の特例を利用できる場合があります。貸付事業用宅地として認められれば、200㎡まで評価額を50%減額できる可能性があります。
この特例は相続税対策の中でも効果が大きく、土地価格が高い地域では特に大きな節税効果につながることがあります。
- 貸付事業用宅地として利用されている
- 相続人が事業を継続する
- 相続税申告期限まで保有する
これらの条件を満たすことで、小規模宅地等の特例を利用できる可能性があります。
税制改正後の相続対策の考え方
2026年税制改正によって、アパート経営による相続税対策の考え方は大きく変わる可能性があります。これまでのような短期的な節税対策ではなく、次のような視点がより重要になります。
- 長期的な資産運用として成立するか
- 賃貸需要が安定している立地か
- 家賃収入でローン返済や修繕費をまかなえるか
- 相続後の資産管理がしやすいか
つまり、今後の相続税対策は「税金だけを見る時代」から「資産価値と収益性を重視する時代」に変わりつつあります。アパート経営を検討する際は、税制改正の影響を理解したうえで、長期的な資産戦略として考えることが重要です。
次の章では、相続税対策としてアパート経営を成功させるための具体的なポイントについて解説します。
相続税対策として失敗しないアパート経営のポイント
相続税対策としてアパート経営を検討する人は多いですが、節税効果だけに注目してしまうと失敗する可能性があります。アパート経営はあくまで不動産投資であり、長期的な収益性や資産価値を踏まえた計画が必要です。特に2026年税制改正によって短期的な節税目的の不動産取得は効果が小さくなる可能性があるため、これまで以上に「経営として成立するか」という視点が重要になります。
ここでは、相続税対策としてアパート経営を成功させるために押さえておきたい重要なポイントを解説します。
立地と賃貸需要を最優先に考える
アパート経営で最も重要なのは立地です。どれだけ税制上のメリットがあっても、入居者が集まらなければ経営は成り立ちません。特に人口減少が進む地域では、将来的に賃貸需要が減少する可能性もあります。
物件を検討する際には、次のようなポイントを確認しておくことが重要です。
- 駅や主要施設からの距離
- 周辺の人口動態や将来の人口予測
- 大学・企業・商業施設などの有無
- 同エリアの賃貸物件の空室率
長期的に安定した賃貸需要が見込めるエリアでなければ、節税効果よりも空室リスクのほうが大きくなる可能性があります。
節税だけでなく収益性を重視する
相続税対策としてアパートを建てる場合でも、賃貸経営として利益が出るかどうかを必ず確認する必要があります。節税効果があっても、家賃収入より支出が多くなれば資産形成としては失敗です。
| チェック項目 | 確認ポイント |
| 家賃設定 | 周辺相場と比較して適正か |
| 空室率 | 地域の平均空室率 |
| 維持費 | 管理費・修繕費・固定資産税 |
| ローン返済 | 家賃収入で返済可能か |
基本的には「満室でなくても収支が成り立つか」を目安にシミュレーションを行うと、より安全な経営計画になります。
長期保有を前提に計画する
アパート経営は短期的な投資ではなく、10年〜30年単位の長期運用を前提とした資産です。特に2026年税制改正では、相続前5年以内に取得した賃貸用不動産の評価方法が見直されるため、短期間で節税を狙う方法は難しくなります。
そのため、次のような視点で計画することが重要です。
- 相続までの期間を考慮した資産計画
- 長期的な修繕計画
- 将来の売却可能性
- 人口減少による賃貸需要の変化
短期的な節税目的ではなく、長期資産として成立するかを判断することが成功のポイントになります。
相続トラブルを防ぐ対策をしておく
不動産は現金と違って分割が難しいため、相続トラブルの原因になることがあります。特に相続人が複数いる場合、共有名義になると売却や管理の意思決定が難しくなるケースがあります。
こうした問題を防ぐためには、事前に相続対策を準備しておくことが大切です。
- 遺言書の作成
- 家族信託の活用
- 資産分割のシミュレーション
- 相続人同士の事前相談
専門家と相談して計画を立てる
相続税対策としてのアパート経営は、税務・不動産・金融など複数の分野が関係します。そのため、自己判断だけで進めるのではなく、専門家の意見を参考にすることが重要です。
| 専門家 | 主な役割 |
| 税理士 | 相続税シミュレーション |
| 不動産会社 | 立地・賃貸需要の分析 |
| 金融機関 | 資金計画・ローン相談 |
| 司法書士 | 相続手続きや遺言書作成 |
複数の専門家と連携して計画を立てることで、リスクを減らしながら相続税対策を進めることができます。
ポイントをまとめると
相続税対策としてアパート経営を成功させるためには、次の点を意識することが重要です。
- 立地と賃貸需要を最優先に考える
- 節税だけでなく収益性を重視する
- 長期保有を前提とした計画を立てる
- 相続トラブルを防ぐ対策を準備する
- 税理士など専門家と相談して進める
相続税対策としてのアパート経営は、適切な計画と運用を行えば有効な資産戦略になる可能性があります。しかし、節税だけを目的にすると経営リスクが高くなることもあります。税制改正の影響も踏まえながら、長期的な資産形成として検討することが重要です。
アパート経営による相続税対策はどんな人に向いているのか

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アパート経営は相続税対策として広く知られていますが、すべての人に適しているわけではありません。相続税対策として成功するケースには共通する特徴があります。逆に、条件が合わない場合は空室リスクや資金負担が大きくなり、期待した効果が得られない可能性もあります。そのため、自分の資産状況や土地条件を踏まえて、本当にアパート経営が適しているかを見極めることが重要です。
ここでは、相続税対策としてアパート経営が向いている人の特徴を具体的に解説します。
土地をすでに所有している人
アパート経営による相続税対策が最も効果を発揮しやすいのは、すでに土地を所有している人です。特に都市部や人口が多い地域では土地価格が高く、相続税評価額も大きくなりやすいため、そのまま保有していると相続税負担が重くなる可能性があります。
その土地にアパートを建てることで、貸家建付地として評価額を下げることができ、相続税対策として効果が出やすくなります。
- 都市部や住宅地に土地を持っている
- 使っていない遊休地がある
- 相続税評価額が高い土地を所有している
相続税が発生する可能性が高い人
相続税対策は、そもそも相続税がかかる可能性がある人に向いています。日本では基礎控除があるため、すべての人に相続税がかかるわけではありません。しかし、不動産や金融資産を多く保有している場合は、相続税が発生するケースがあります。
特に次のような資産構成の人は、相続税対策としてアパート経営を検討するケースが多く見られます。
| 資産タイプ | 相続税リスク | アパート経営との相性 |
| 都市部の土地を所有 | 高い | 相続税評価を下げやすい |
| 現金・預金が多い | 高い | 不動産に組み替えることで評価減 |
| 地方の土地のみ | 低〜中 | 賃貸需要を確認する必要あり |
長期的な資産運用を考えている人
アパート経営は短期的な投資ではなく、長期的な資産運用として考える必要があります。建物の耐用年数や賃貸市場の変化を考えると、10年〜30年単位での計画が必要になることもあります。
特に2026年税制改正では、相続前5年以内に取得した賃貸用不動産の評価方法が見直される予定であり、短期的な節税目的の不動産取得は効果が小さくなる可能性があります。そのため、長期的な資産形成を考えている人ほどアパート経営との相性が良いと言えます。
安定した賃貸需要が見込める地域に土地がある人
アパート経営では立地が非常に重要です。人口が多い都市部や駅近エリア、大学や企業が近い地域では賃貸需要が安定している傾向があります。このような地域であれば空室リスクが比較的低く、安定した家賃収入が期待できます。
反対に、人口減少が進む地域では空室率が高くなる可能性があるため、相続税対策としても慎重な判断が必要です。
- 駅や商業施設が近い
- 大学や企業がある
- 人口が増えているエリア
- 賃貸需要が安定している地域
家族で資産管理を引き継げる人
アパートは相続後も管理や運営が必要になる資産です。そのため、相続人が賃貸経営を引き継げるかどうかも重要なポイントになります。家族の中に不動産管理を担当できる人がいる場合は、アパート経営による資産承継がスムーズに進む可能性があります。
| 相続後の状況 | 向いている度合い |
| 家族で経営を継続できる | 高い |
| 管理会社に委託できる | 中程度 |
| 管理できる人がいない | 低い |
まとめ:アパート経営が向いている人の特徴
ここまで紹介した内容を整理すると、相続税対策としてアパート経営が向いている人には次のような特徴があります。
- 都市部など価値の高い土地を所有している
- 相続税が発生する可能性が高い
- 長期的な資産運用を考えている
- 賃貸需要のある地域に土地がある
- 相続後も家族で資産管理ができる
このような条件がそろっている場合、アパート経営は相続税対策と資産運用の両方を実現できる可能性があります。ただし、土地条件や市場環境によって結果は大きく変わるため、実際に検討する際には税理士や不動産の専門家と相談しながら慎重に判断することが重要です。
まとめ|アパート経営による相続税対策のポイント
- アパート経営は、現金や更地よりも相続税評価額を下げやすい資産の持ち方として注目されている
- 土地は「貸家建付地」、建物は「貸家評価」によって評価額が圧縮される可能性があり、相続税の課税対象額を減らせるケースがある
- アパートローンを利用した場合は、借入金を「債務控除」として差し引けるため、資産と負債の評価差によって課税財産を圧縮できる可能性がある
- 家賃収入を得られるため、相続税の納税資金を準備しやすい点もアパート経営の大きなメリット
- 小規模宅地等の特例を利用できる場合、アパート用地の評価額を最大50%減額できる可能性があり、節税効果がさらに大きくなるケースもある
- ただし空室リスク、修繕費、資産価値の下落、相続トラブルなどの経営リスクもあり、節税だけを目的にすると失敗する可能性がある
- 2026年税制改正の「5年ルール」により、相続直前の不動産取得による節税は効果が小さくなる可能性があり、短期的な節税スキームは通用しにくくなっている
- 今後は「節税目的のアパート購入」ではなく、賃貸需要・収益性・長期保有を前提とした資産運用として成り立つかどうかが重要な判断基準になる
- 相続税対策として検討する際は、税金だけでなく収支計画、立地条件、相続人の資産分割まで含めた総合的な視点で判断することが重要
- 実際にアパート経営による相続税対策を行う場合は、税理士や不動産専門家とシミュレーションを行い、自分の資産状況に合った方法を選ぶことが成功のポイントとなる


