「相続税対策として不動産を購入すると節税になる」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際、不動産は現金よりも相続税評価額が低く算出されるケースが多く、長年にわたり相続税対策の代表的な方法として活用されてきました。しかし近年は税制改正や評価ルールの見直しが進み、以前のように「とりあえず不動産を買えば節税できる」という単純な考え方は通用しにくくなっています。
特に2026年の税制改正では、相続直前の不動産購入による節税を抑制するルールが導入され、不動産による相続対策はより長期的な資産戦略として考える必要が出てきました。
本記事では、相続税の基本的な仕組みから、不動産が節税につながる理由、2026年改正のポイント、さらに不動産選びの考え方や出口戦略までをわかりやすく解説します。相続税の負担を抑えながら、将来の資産承継をスムーズに進めるために、いま知っておきたい重要ポイントを整理していきましょう。
※本記事に掲載されている情報は、2026年3月時点の税制および関係法令に基づき、一般的な情報の提供を目的として作成されたものです。実際の相続税申告や不動産投資にあたっては、個別の状況により適用されるルールが異なる場合があります。具体的な対策の実行に際しては、必ず税理士、弁護士、不動産鑑定士等の専門家にご相談ください。
- 相続税対策として不動産購入が注目される理由
- 相続税の仕組みと不動産が節税につながる理由
- 2026年税制改正のポイント|不動産相続対策は「5年保有」が重要
- 新ルール「5年ルール」とは?相続税評価が変わる仕組み
- 5年以上保有した不動産はなぜ相続税評価が下がるのか
- 小規模宅地等の特例とは|最大80%減額できる制度
- 相続税対策に向いている不動産の種類(アパート・マンション・土地)
- 2026年以降の相続税対策で重要な不動産の選び方
- 不動産購入による相続税対策のメリット
- 不動産相続対策のデメリットと注意点
- 相続後に困らないための出口戦略(売却・分割の考え方)
- 2026年改正を踏まえた相続税対策の進め方
- まとめ|不動産を活用した相続税対策のポイント
相続税対策として不動産購入が注目される理由

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相続税対策として不動産購入が注目される最大の理由は、現金のまま財産を持つよりも、相続税を計算するときの評価額を下げやすいからです。相続税は、単純に「いくらで買ったか」ではなく、税法上の評価額をもとに計算されます。現金や預貯金は額面どおり100%で評価されますが、不動産は土地が路線価、建物が固定資産税評価額を基準に評価されるため、一般的には時価よりも低い金額になります。つまり、同じ1億円の資産でも、現金で持つ場合と不動産に組み替えた場合では、相続税の対象となる金額に差が出やすいということです。
この評価差があるため、相続税の負担を抑えたい人にとって、不動産購入は有力な選択肢として長く活用されてきました。特に、相続税の課税対象になりやすいのは、土地を多く持つ人だけではありません。近年は都市部の不動産価格上昇や金融資産の増加により、現金や有価証券を多く保有する家庭でも、相続税の負担が想像以上に大きくなるケースがあります。そのため、単に資産を増やすだけでなく、どう持つかという視点が重要になっています。
不動産購入が注目される背景は、単なる評価額の圧縮だけではありません。賃貸用不動産にすると、さらに評価を下げられる可能性がある点も大きな特徴です。貸している不動産は、所有者が自由に使えない制約があるため、相続税評価上は自用地や自宅よりも低く評価される仕組みがあります。加えて、借入金を活用して不動産を購入した場合は、その債務を相続財産から差し引けるため、資産全体の圧縮効果がより大きくなることがあります。
まずは、現金と不動産でどのような違いが生まれるのかを整理すると、全体像がつかみやすくなります。
| 資産の種類 | 相続税評価の考え方 | 評価の傾向 |
| 現金・預貯金 | 額面そのまま | 100%で評価されやすい |
| 土地 | 路線価または倍率方式 | 時価より低くなりやすい |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 建築費や時価より低くなりやすい |
| 賃貸不動産 | 貸家建付地・貸家評価を反映 | さらに評価減が見込める |
この表からわかるように、不動産は現金と比べて評価額を抑えやすい資産です。ただし、ここで重要なのは「不動産なら何でもよいわけではない」という点です。立地が悪く収益性の低い物件や、将来売却しにくい物件を選んでしまうと、相続税の評価は下がっても、家族にとって扱いにくい資産が残る可能性があります。節税だけを目的に選ぶのではなく、相続後も保有・運用・売却しやすいかまで含めて考える必要があります。
近年は制度改正の影響もあり、このテーマへの関心がさらに高まっています。とくに2026年改正では、貸付用不動産の相続税評価に大きな見直しが入り、「亡くなる直前に買えば大きく節税できる」という従来の発想が通用しにくくなりました。今後は、短期的な節税策ではなく、5年以上の保有を前提にした長期設計が重視されます。こうした変化もあり、相続税対策としての不動産購入は、以前よりも慎重かつ計画的に進めるべきテーマになっています。
実際に、不動産購入が相続税対策として選ばれる理由は、主に次のように整理できます。
- 現金より相続税評価額を下げやすい
- 賃貸化によって追加の評価減が期待できる
- 借入を使うことで債務控除を活用できる
- 家賃収入という継続収入も見込める
- 小規模宅地等の特例と組み合わせやすい場合がある
このように見ると、不動産購入は節税と資産運用を同時に考えやすい手段です。ただし、収益物件として成立しない不動産や、相続人同士で分けにくい不動産を選ぶと、税金は抑えられても別の問題が発生します。たとえば、相続後に誰が管理するのか決まらない、売りたくても買い手がつかない、修繕費がかさんで負担が重くなるといったケースです。相続税対策は、税額だけでなく、相続後の実務まで見据えて考えることが欠かせません。
そのため、不動産購入が注目される理由は、単なる節税テクニックにとどまりません。資産の持ち方を見直し、相続時の税負担を減らしながら、将来の家族の管理負担や資金計画まで整えやすい点に価値があります。言い換えると、不動産購入は相続税対策の手段であると同時に、資産承継の設計そのものを見直すきっかけにもなるのです。
ただし、現時点での確認では、税制改正や評価ルールの見直しにより、以前ほど単純に大きな節税効果を見込みにくくなっています。だからこそ、いまは「買えば節税できる」という考え方ではなく、「どの不動産を、どの目的で、どの期間保有するか」を軸に検討することが重要です。相続税対策として不動産購入が注目されるのは事実ですが、本当に効果を出すためには、税務と不動産の両面から冷静に判断する必要があります。
相続税の仕組みと不動産が節税につながる理由

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相続税対策として不動産購入が活用される理由を理解するためには、まず相続税の基本的な仕組みを知ることが重要です。相続税は、亡くなった人(被相続人)が残した財産の合計額に対して課税される税金であり、その金額は「相続税評価額」をもとに計算されます。ここで重要なのは、財産の種類によって評価方法が異なる点です。同じ金額の資産であっても、現金として持っている場合と不動産として保有している場合では、相続税の対象となる評価額に差が生じることがあります。
相続税にはまず基礎控除があり、この金額を超えた部分に対して税金が課されます。基礎控除は以下の計算式で求められます。
| 項目 | 内容 |
| 基礎控除の計算式 | 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 |
例えば、法定相続人が3人いる場合の基礎控除は次のようになります。
| 法定相続人数 | 基礎控除額 |
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
この基礎控除を超えると相続税が発生し、金額に応じて税率が上がる「累進課税」が適用されます。税率は10%から最大55%まで段階的に上昇するため、財産額が大きいほど税負担も大きくなります。つまり、相続税対策の基本は「課税対象となる財産評価額をいかに下げるか」という点にあります。
ここで注目されるのが不動産です。現金や預貯金は額面どおり100%で評価されますが、不動産は税法上の評価方法が異なるため、一般的に市場価格より低く評価されます。代表的な評価方法は次のとおりです。
| 資産の種類 | 評価方法 | 評価の目安 |
| 現金・預貯金 | 額面評価 | 100% |
| 土地 | 路線価または倍率方式 | 時価の約70〜80% |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 時価の約60〜70% |
例えば、1億円の現金をそのまま相続する場合、評価額は1億円になります。しかし、その1億円で不動産を購入した場合、土地と建物の評価額が合計で7,000万円程度になるケースもあります。この場合、相続税の課税対象額が3,000万円も圧縮される可能性があります。税率が30%であれば、単純計算でも900万円の税額差が生まれることになります。
さらに、不動産を賃貸に出している場合は評価額が追加で下がる可能性があります。賃貸物件は所有者が自由に使用できないという制約があるため、税法上は「貸家」や「貸家建付地」として評価されます。この仕組みにより、土地と建物の評価額がさらに減額される場合があります。
賃貸不動産の評価減の考え方は次のとおりです。
- 土地は「貸家建付地」として評価される
- 建物は「貸家評価」として減額される
- 賃貸割合や借地権割合に応じて評価額が下がる
これにより、同じ不動産でも「自宅として所有する場合」と「賃貸として運用する場合」では相続税評価額が変わることがあります。不動産購入が相続税対策として使われる理由の一つは、この評価減の仕組みにあります。
また、不動産投資では金融機関からの借入を利用するケースも少なくありません。借入金は相続時に「債務」として扱われるため、相続財産から差し引くことができます。つまり、不動産の評価額が圧縮されるだけでなく、借入金の分だけ課税対象となる資産額も減ることになります。
不動産購入による相続税対策のポイントは次の3つに整理できます。
- 現金より低い評価額で計算される
- 賃貸にするとさらに評価が下がる
- 借入金を債務控除として差し引ける
このような理由から、不動産は相続税対策として多くの人に活用されてきました。ただし近年は税制改正や評価ルールの見直しも進んでおり、短期的な節税目的の不動産購入が否認されるケースもあります。したがって、不動産購入を検討する際は、節税だけでなく収益性や将来の売却可能性なども含めて総合的に判断することが重要です。
相続税の仕組みを理解すると、不動産がなぜ節税につながるのかが見えてきます。単に資産を増やすだけでなく、資産の持ち方を工夫することが相続対策の基本といえるでしょう。
2026年税制改正のポイント|不動産相続対策は「5年保有」が重要

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相続税対策として不動産購入を検討する場合、2026年の税制改正は非常に重要な転換点になります。これまでの相続対策では「亡くなる直前に不動産を購入することで相続税評価額を大きく下げる」という方法が広く知られていました。しかし、この方法は租税回避に近い節税手法として問題視されるケースが増えたため、税制改正によって評価ルールが見直されることになりました。
今回の改正で最も注目されているのが、いわゆる「5年ルール」です。これは、相続開始(死亡)前5年以内に取得または新築した貸付用不動産について、従来の路線価評価ではなく取得価額(時価)に近い水準で評価するというものです。つまり、短期間の保有による大幅な節税が難しくなり、不動産による相続税対策は長期的な資産計画として考える必要が出てきました。
改正前と改正後の評価の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
| 不動産の評価方法 | 路線価・固定資産税評価額 | 5年以内取得は取得価額ベース |
| 評価額の目安 | 時価の30〜40%程度まで圧縮可能 | 取得価額の約80%程度 |
| 節税効果 | 短期間でも大きな節税が可能 | 短期対策は効果が限定的 |
| 対策の考え方 | 相続直前の購入でも効果あり | 長期保有を前提とした対策が必要 |
このルールにより、相続税対策として不動産購入を検討する場合は「保有期間」が非常に重要になります。購入から5年以上経過していれば、従来どおり路線価や固定資産税評価額を基準とした評価が適用されるため、評価額を圧縮する効果が期待できます。逆に、購入から5年以内に相続が発生した場合は、取得価格に近い評価額になるため、節税効果は大きく下がる可能性があります。
具体的なイメージを示すと、次のような違いが生まれます。
| 資産内容 | 従来評価(5年以上保有) | 5年以内取得の場合 |
| 1億円の不動産 | 評価約4,000万〜5,000万円 | 評価約8,000万円 |
| 節税効果 | 大きい | 限定的 |
このように、短期保有と長期保有では評価額に大きな差が出る可能性があります。そのため、これから不動産による相続税対策を検討する場合は「いつ相続が発生しても問題がない資産構成」を作ることが重要になります。単に節税だけを目的に物件を購入するのではなく、長期保有を前提とした資産運用として考える必要があります。
また、今回の税制改正では不動産小口化商品にも大きな影響があります。これまで100万円単位など少額で投資できる不動産商品は、相続税対策として利用されるケースがありました。しかし今後は、保有期間に関係なく時価評価となる方向で見直しが進んでいるため、節税目的での活用は難しくなると考えられています。
こうした制度変更を踏まえると、今後の相続税対策としての不動産購入では次のポイントが重要になります。
- 相続直前の購入ではなく長期保有を前提にする
- 節税だけでなく収益性のある物件を選ぶ
- 売却しやすい立地や需要のあるエリアを選ぶ
- 相続後の管理や分割方法も考えておく
相続税対策として不動産購入を検討する場合、以前のような「短期節税型」の考え方は通用しにくくなりました。2026年税制改正によって、不動産はより長期的な資産戦略として活用する必要があります。相続税を抑えるだけでなく、収益性や流動性を含めて総合的に判断することが、これからの相続対策では重要になるといえるでしょう。
新ルール「5年ルール」とは?相続税評価が変わる仕組み

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2026年の税制改正において、不動産による相続税対策で最も注目されているのが「5年ルール」です。このルールは、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産の評価方法を見直すもので、短期間の節税を目的とした不動産購入を抑制する目的で導入されました。従来は、亡くなる直前に不動産を購入しても路線価や固定資産税評価額を基準に相続税評価額を算出できたため、評価額を大きく下げることが可能でした。しかし新ルールでは、取得から5年以内の物件は「取得価額(時価)」に近い金額で評価される仕組みに変わります。
この変更により、不動産を使った相続税対策は短期的な節税手法ではなく、長期的な資産戦略として考える必要があります。まずは改正前と改正後の違いを整理してみましょう。
| 項目 | 改正前 | 改正後(5年ルール) |
| 対象物件 | 貸付用不動産 | 相続前5年以内に取得した貸付用不動産 |
| 評価方法 | 路線価・固定資産税評価額 | 取得価額(時価)の約80%程度 |
| 節税効果 | 短期間でも評価圧縮が可能 | 短期保有では節税効果が小さい |
| 対策の考え方 | 相続直前の購入でも有効 | 5年以上の長期保有が必要 |
この表からわかるように、最大のポイントは「取得から5年以内かどうか」です。購入から5年以内に相続が発生した場合、従来のような大きな評価減は期待できません。例えば1億円で購入した賃貸マンションがある場合、従来は路線価評価などにより評価額が4,000万円程度まで下がることもありました。しかし新ルールでは、取得から5年以内であれば約8,000万円程度で評価される可能性があります。
一方で、購入から5年以上経過している場合は従来の評価方法が適用されるため、路線価や固定資産税評価額を基準とした評価になります。つまり、不動産を使った相続税対策そのものが否定されたわけではなく、「短期節税」が制限されただけといえます。
5年ルールの導入によって、不動産購入による相続税対策では次の点が重要になりました。
- 相続を見据えた早めの資産計画
- 節税だけでなく収益性を重視した物件選び
- 長期保有を前提とした資産形成
- 相続後の売却や分割を考えた出口戦略
また、このルールが影響するのは主に「貸付用不動産」です。自宅などの居住用不動産については、引き続き小規模宅地等の特例などが利用できるケースが多く、大きな節税効果が残されています。したがって、不動産による相続税対策を検討する場合は、賃貸物件だけでなく自宅の活用も含めて総合的に検討することが重要です。
今回の5年ルールによって、不動産を使った相続税対策は「タイミング」がより重要になりました。従来のように相続直前の購入では十分な節税効果を得られない可能性があるため、できるだけ早い段階から資産構成を見直しておくことが大切です。相続税対策として不動産購入を考える場合は、税制のルールだけでなく、収益性や将来の売却可能性も含めて長期的な視点で検討することが成功のポイントになります。
5年以上保有した不動産はなぜ相続税評価が下がるのか
相続税対策として不動産購入が活用される大きな理由の一つが、長期保有した不動産は相続税評価額が時価より低くなる仕組みにあります。特に2026年の税制改正では「5年ルール」が導入され、相続前5年以内に取得した貸付用不動産は取得価格に近い評価がされるようになりました。そのため、5年以上保有している不動産かどうかが、節税効果を左右する重要なポイントになります。
では、なぜ5年以上保有している不動産は評価額が下がりやすいのでしょうか。その理由は、不動産の相続税評価が「実際の市場価格」ではなく、税法上の評価基準によって計算されるからです。土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基準に算出されるため、一般的に市場価格より低い評価になります。
代表的な評価基準は次のとおりです。
| 資産の種類 | 評価方法 | 評価の目安 |
| 現金・預貯金 | 額面評価 | 100% |
| 土地 | 路線価方式 | 時価の約70〜80% |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 建築費の約60〜70% |
この評価方法によって、同じ金額の資産でも現金より不動産の方が相続税評価額が低くなる傾向があります。例えば、1億円の現金をそのまま相続すると評価額は1億円ですが、その1億円で不動産を購入すると評価額が7,000万円前後になることも珍しくありません。税率が30%のケースでは、単純計算でも約900万円の税額差が生まれる可能性があります。
さらに、不動産を賃貸として運用している場合は、評価額が追加で下がる仕組みがあります。賃貸物件は所有者が自由に使えないため、税法上は「貸家」や「貸家建付地」として扱われます。この制度によって、土地と建物の評価額がさらに減額される可能性があります。
賃貸不動産の評価減の主な要素は次のとおりです。
- 土地が「貸家建付地」として評価される
- 建物が「貸家」として評価減される
- 賃貸割合に応じて評価額が下がる
これらの要素が組み合わさることで、実際の市場価格より大きく評価額が下がるケースもあります。長期間保有した賃貸不動産は、税務上も安定した貸付事業とみなされやすく、従来の評価方法が適用されるため節税効果が維持されやすいのです。
一方で、短期間で取得した不動産は節税目的の取引と判断される可能性があります。そのため2026年改正では、取得から5年以内の貸付用不動産について取得価額ベースで評価する仕組みが導入されました。このルールによって、短期保有による大幅な節税は難しくなっています。
つまり、不動産による相続税対策では「どれだけ長く保有しているか」が重要になります。長期保有することで、次のようなメリットが期待できます。
- 路線価・固定資産税評価額による低い評価が適用される
- 賃貸実績が積み重なり評価減が認められやすい
- 相続直前の節税目的と疑われにくい
- 収益物件として家賃収入を得られる
このように、5年以上保有した不動産は税法上の評価基準が適用されやすくなるため、結果として相続税評価額が下がる可能性があります。ただし、節税効果だけで物件を選ぶのは危険です。収益性が低い物件や売却しにくい物件を選ぶと、相続後に管理や処分で困るケースもあります。
不動産による相続税対策を成功させるためには、節税だけでなく「長期保有できる資産か」「相続後も運用しやすいか」という視点が重要になります。5年以上保有することを前提に、収益性や立地、将来の売却可能性まで含めて検討することが、これからの相続対策では欠かせないポイントといえるでしょう。
不動産購入による相続税対策の3つの仕組み(評価額圧縮・賃貸活用・債務控除)
不動産購入が相続税対策として活用される理由は、大きく分けて3つの仕組みにあります。それが「評価額の圧縮」「賃貸による評価減」「借入による債務控除」です。これらの仕組みを理解しておくことで、不動産がどのように相続税負担を軽減する可能性があるのかが見えてきます。ここでは、それぞれの仕組みをわかりやすく整理して解説します。
まず最も基本となるのが「評価額の圧縮」です。相続税は、財産の市場価格(時価)ではなく税法上の評価額をもとに計算されます。現金や預金は額面どおり100%で評価されますが、不動産は土地と建物で評価基準が異なるため、一般的に時価より低い金額になります。
| 資産の種類 | 評価方法 | 評価の目安(時価比) |
|---|---|---|
| 現金・預貯金 | 額面評価 | 100% |
| 土地 | 路線価または倍率方式 | 公示地価の約80%程度 |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 再調達価額の約50〜70%程度 |
例えば、1億円相当の現金をそのまま相続する場合、評価額は1億円になります。しかし、その資金で不動産を購入した場合、土地・建物の評価額合計が時価の70〜80%程度になるケースが多く、評価額を圧縮できる可能性があります。相続税は累進課税であるため、評価額が下がるほど税額への影響は大きくなります。
次に重要なのが「賃貸活用」です。不動産を自宅として所有するだけでなく、アパートやマンションとして第三者に貸し出している場合、相続税評価額はさらに下がる可能性があります。これは、賃貸中の不動産は所有者が自由に使用できない制約があるため、資産価値が低く評価される仕組みです。
賃貸不動産の評価減は、主に以下の計算によって行われます(国税庁基準)。
- 土地:貸家建付地評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
- 借地権割合:地域により30〜90%(多くは60〜70%)
- 借家権割合:全国一律30%
- 賃貸割合:実際に貸し付けている床面積の割合
- 建物:貸家評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
これにより、賃貸物件の場合、土地評価が自用地より10〜30%程度低くなることが一般的です。
賃貸による評価減のイメージを簡単に整理すると次のようになります。
| 物件の状態 | 評価の特徴 | 評価額の目安(時価比) |
|---|---|---|
| 自宅として利用 | 自用地評価 | 公示地価の約80%程度 |
| 賃貸物件 | 貸家建付地評価 | 自用地よりさらに低くなる(10〜30%程度追加減) |
つまり、同じ不動産でも「自宅として持つか」「賃貸として運用するか」によって相続税評価額が変わる可能性があります。このため、相続税対策ではアパートや賃貸マンションなどの収益不動産が利用されるケースが多く見られます。
そして3つ目の仕組みが「債務控除」です。不動産購入では金融機関から融資を受けるケースが多くありますが、この借入金は相続時に「マイナスの財産」として扱われ、相続財産から差し引くことができます(確実な債務に限る)。
例えば次のようなケースを考えてみましょう。
| 項目 | 金額の例 |
|---|---|
| 不動産評価額 | 7,000万円 |
| 借入金残高 | 5,000万円 |
| 相続税の対象財産 | 2,000万円 |
このように、借入金がある場合は財産評価から差し引かれるため、課税対象となる資産額が減る可能性があります。ただし、以下の点に注意が必要です:
- 団体信用生命保険付き住宅ローンは、死亡により保険金で債務が消滅するため、原則として債務控除の対象外です。
- 借入には返済負担や金利負担があるため、収益性や資金計画を慎重に検討してください。
ここまで解説した3つの仕組みを整理すると次のようになります。
| 仕組み | 内容 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 評価額の圧縮 | 現金を不動産に変える | 相続税評価額を下げる |
| 賃貸活用 | 貸家・貸家建付地評価 | さらに評価減が可能 |
| 債務控除 | 借入金を差し引く | 課税対象財産を減らす |
ただし、不動産購入による相続税対策は万能ではありません。2026年の税制改正(令和8年度改正)により、相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産は、従来の路線価評価ではなく、取得価額を基に地価変動を考慮した額(実勢価格の約80%程度)で評価されるルールが導入されました。これにより、短期的な節税目的の購入は効果が大幅に制限されます。また、不動産には空室リスク、価格下落リスク、相続後の管理負担などもあります。そのため、節税だけを目的に物件を選ぶのではなく、収益性や立地、将来の売却可能性まで含めて総合的に判断することが重要です。
不動産購入を相続税対策として活用する場合は、この3つの仕組みを理解したうえで、長期的な資産計画の中で検討することが大切です。税制のルールや物件の収益性を踏まえ、税理士などの専門家の意見を参考にしながら慎重に進めていくことが成功のポイントになります。
ご自身の状況に合わせて個別相談をおすすめします。税制は改正される可能性がありますので、最新情報は国税庁ホームページや専門家にご確認ください。
小規模宅地等の特例とは|最大80%減額できる制度
相続税対策を考えるうえで非常に重要な制度の一つが「小規模宅地等の特例」です。この制度は、被相続人(亡くなった方)が相続開始の直前において事業の用または居住の用に供していた宅地等(土地または土地の上に存する権利)について、一定の要件を満たす場合に相続税評価額を大幅に減額できる仕組みです。特に自宅の土地(特定居住用宅地等)については最大80%の評価減が認められるため、相続税負担を大きく軽減できる可能性があります。
相続税は財産の評価額をもとに計算されますが、土地の評価額は資産全体の中でも大きな割合を占めることが多いため、この特例の影響は特に大きいです。たとえば、評価額1億円の土地に80%の減額が適用されれば、課税対象となる評価額は2,000万円まで下がります。
小規模宅地等の特例にはいくつかの種類があり、土地の利用目的によって減額割合や適用できる面積(限度面積)が異なります。代表的な区分は次のとおりです(国税庁No.4124に基づく最新基準)。
| 区分 | 減額割合 | 限度面積 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 80% | 330㎡ | 被相続人が住んでいた自宅の土地 |
| 特定事業用宅地等 | 80% | 400㎡ | 被相続人が事業に使用していた土地(貸付事業を除く) |
| 貸付事業用宅地等 | 50% | 200㎡ | 賃貸アパート・マンションなどの貸付事業用土地 |
(注)特定同族会社事業用宅地等(同族会社の事業用土地)も80%・400㎡で特定事業用と同等扱いですが、主に個人事業中心の解説では省略。複数の種類を併用する場合、貸付事業用を含むと面積調整が必要(最大730㎡まで可能なケースあり)。
この制度の中でも特に利用されることが多いのが「特定居住用宅地等」です。被相続人が住んでいた自宅の土地について、一定の要件を満たす相続人が取得した場合に最大80%の評価減が適用されます。例えば、評価額5,000万円の自宅土地であれば、特例適用後の評価額は1,000万円まで下がります。
ただし、この特例を利用するためには細かい要件があります。代表的な要件は次のとおりです(特定居住用を中心に)。
- 相続または遺贈により宅地等を取得すること
- 取得者が配偶者、同居親族、または「家なき子」特例に該当する親族であること
- 配偶者:要件緩和(継続居住不要)
- 同居親族:申告期限まで引き続き居住・保有
- 家なき子特例(別居親族):相続開始前3年以内に自己・3親等内親族等の所有家屋に住んでいないなど厳格な要件(平成30年改正で強化)
- 申告期限(相続税申告期限)までその宅地等を保有し、居住または事業継続していること(種類による)
- 相続税の申告書に特例適用を記載し、必要書類(遺産分割協議書など)を添付すること
また、賃貸不動産についても「貸付事業用宅地等」として特例が適用される場合があります。この場合は最大50%の評価減となりますが、アパートや賃貸マンションなどを保有している場合は大きな節税効果を生む可能性があります。ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供した宅地等は原則適用対象外(事業的規模で継続している場合を除く)ので注意が必要です。
小規模宅地等の特例を活用するメリットは次のとおりです。
- 土地の評価額を最大80%減額できる
- 相続税の課税対象財産を大幅に減らせる
- 自宅や事業用・賃貸不動産の相続負担を軽減できる
一方で、この制度は適用条件が細かく定められているため、事前の確認が非常に重要です。たとえば、相続人が同居していない場合でも「家なき子特例」で適用できるケースはありますが、要件を満たさないと適用できません。また、申告期限までに売却してしまうと特例が認められない場合もあります。
不動産購入による相続税対策を検討する場合、この小規模宅地等の特例をどのように活用できるかが大きなポイントになります。特に自宅の建て替えや住み替え、賃貸不動産の購入を検討している場合は、この制度を前提に資産計画を立てることで相続税の負担を大きく抑えられる可能性があります。
ただし、制度内容は税制改正などによって変更される可能性があります。2026年(令和8年)税制改正大綱では、主に貸付用不動産の評価方法が見直されましたが、小規模宅地等の特例の基本構造(減額割合・限度面積・要件)は現時点で変更されていません(貸付事業用に関する一部影響の可能性は個別確認を)。具体的な相続対策を進める際は、税理士などの専門家に相談することが重要です。
ご自身の状況に合わせて個別相談をおすすめします。税制は改正される可能性がありますので、最新情報は国税庁ホームページ(No.4124)や専門家にご確認ください。
相続税対策に向いている不動産の種類(アパート・マンション・土地)

画像はイメージです
相続税対策として不動産購入を検討する場合、どの種類の不動産を選ぶかは非常に重要なポイントになります。なぜなら、不動産の種類によって相続税評価額の下がり方や収益性、相続後の管理のしやすさが大きく異なるためです。相続税対策では単に評価額を下げることだけでなく、相続後に家族が扱いやすい資産かどうかも考慮する必要があります。
一般的に相続税対策として検討される不動産には、主に「一棟アパート」「区分マンション」「土地」の3つがあります。それぞれ特徴や向いているケースが異なるため、まずは全体像を整理しておきましょう。
| 不動産の種類 | 特徴 | 相続税対策としてのポイント |
| 一棟アパート | 建物と土地をまとめて所有する収益物件 | 貸家建付地評価で評価額を圧縮しやすい |
| 区分マンション | マンションの1室単位で購入する不動産 | 少額から始めやすく分割しやすい |
| 土地 | 更地や賃貸用地として保有する土地 | 小規模宅地等の特例を活用しやすい |
まず、相続税対策として最もよく利用されるのが「一棟アパート」です。一棟アパートは土地と建物をまとめて所有し、複数の入居者から家賃収入を得るタイプの不動産です。賃貸用不動産として利用されるため、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として評価され、相続税評価額が下がる可能性があります。
- 土地の評価が貸家建付地として減額される
- 建物も貸家評価で減額される
- 家賃収入があるため収益性も確保しやすい
このような特徴から、相続税対策と資産運用を同時に考えたい人に向いている不動産といえます。ただし、空室リスクや建物の修繕費なども考慮する必要があります。
次に、比較的始めやすいのが「区分マンション」です。区分マンションはマンションの1室を購入する形になるため、一棟アパートと比べて購入価格が低く、少額から不動産投資を始められるというメリットがあります。
- 比較的少ない資金で購入できる
- 複数戸を購入すれば相続人ごとに分けやすい
- 管理会社があるため管理負担が小さい
特に相続人が複数いる場合、区分マンションは分割しやすいというメリットがあります。不動産は現金のように自由に分割できないため、相続時のトラブルになることも少なくありません。その点、区分マンションを複数所有していれば、それぞれを相続人に分けるという方法も検討できます。
そしてもう一つの選択肢が「土地」です。土地は建物と違って価値が残りやすい資産であり、長期的な資産保全を目的とする場合によく利用されます。特に自宅の土地については「小規模宅地等の特例」を利用できる可能性があり、最大80%の評価減が適用される場合があります。
| 土地の利用方法 | メリット | 注意点 |
| 自宅用地 | 小規模宅地等の特例で最大80%減額 | 同居などの条件あり |
| 賃貸用地 | 貸付事業用宅地として50%減額 | 賃貸事業の継続が必要 |
土地は建物のように老朽化しないため資産価値が維持されやすいというメリットがあります。一方で、収益性がない場合は固定資産税の負担だけが続くこともあるため、用途をしっかり検討することが大切です。
ここまで紹介したように、相続税対策に向いている不動産にはそれぞれ特徴があります。まとめると次のようになります。
- アパート:評価減が大きく収益性も期待できる
- マンション:少額から始めやすく分割しやすい
- 土地:資産価値が安定し特例を活用しやすい
ただし、不動産は種類によってリスクも異なります。空室リスク、修繕費、価格下落などの可能性もあるため、節税だけを目的に物件を選ぶのは危険です。相続税対策として不動産購入を検討する場合は、評価額の圧縮だけでなく「収益性」「立地」「将来の売却可能性」といった観点も含めて総合的に判断することが重要になります。
2026年以降の相続税対策で重要な不動産の選び方
2026年の税制改正によって、不動産を活用した相続税対策の考え方は大きく変わりました。従来は「相続直前に不動産を購入して評価額を下げる」という短期的な節税方法が注目されていましたが、今後はそのような対策が難しくなります。特に貸付用不動産については、相続開始前5年以内に取得した場合、取得価額に近い水準で評価される仕組みが導入されるためです。
この制度変更によって、相続税対策としての不動産購入は「長期保有」と「資産性」を重視した選び方が重要になります。節税だけを目的に物件を選ぶのではなく、収益性や将来の売却可能性も含めて総合的に判断することが求められます。
まず、2026年以降の相続税対策で不動産を選ぶ際に重要なポイントを整理すると次のようになります。
- 5年以上の長期保有を前提にする
- 安定した賃貸需要がある立地を選ぶ
- 将来売却しやすい資産価値のある物件を選ぶ
- 相続後に管理しやすい物件を選ぶ
- 家族間で分けやすい資産構成にする
これらのポイントを意識して不動産を選ぶことで、節税効果だけでなく長期的な資産形成にもつながります。
次に、具体的にどのような不動産が相続税対策として適しているのかを比較してみましょう。
| 不動産のタイプ | 特徴 | 相続税対策としてのポイント |
| 一棟アパート | 土地と建物をまとめて所有 | 貸家建付地評価で評価額を下げやすい |
| 区分マンション | マンション1室単位で所有 | 分割しやすく相続人が複数いる場合に向く |
| 都心部の土地 | 資産価値が安定しやすい | 小規模宅地等の特例を活用できる可能性 |
特に重要なのは「立地」です。どれほど節税効果が期待できる物件であっても、需要の少ない地域では空室が続いたり、将来売却できなかったりするリスクがあります。人口が増えている都市部や駅に近い物件は賃貸需要が安定しやすく、資産価値も維持されやすい傾向があります。
また、相続対策では「出口戦略」も重要になります。不動産は現金と違い、1円単位で分けることができません。そのため、相続人が複数いる場合は次のような点も検討する必要があります。
- 不動産を売却して現金化できるか
- 賃貸経営を継続できるか
- 相続人ごとに分割しやすいか
さらに、2026年以降は税務上の否認リスクにも注意が必要です。節税目的だけで購入されたと判断されるような取引は、税務調査で問題になる可能性があります。そのため、不動産購入の際は収益性や事業性がある物件を選び、賃貸経営として成立するかどうかを確認しておくことが重要です。
最後に、不動産選びで失敗しないためのチェックポイントをまとめます。
| チェック項目 | 確認ポイント |
| 立地 | 駅近・人口増加エリアなど需要がある地域か |
| 収益性 | 家賃収入が安定して見込めるか |
| 資産性 | 将来売却できる価値があるか |
| 管理 | 相続後も管理しやすい物件か |
2026年以降の相続税対策では、単純に「不動産を買えば節税できる」という時代ではなくなりました。重要なのは、長期保有を前提に収益性と資産価値を兼ね備えた不動産を選ぶことです。節税効果だけに注目するのではなく、相続後の運用や売却まで見据えた不動産選びが、これからの相続対策では欠かせないポイントといえるでしょう。
相続税対策は「不動産」だけではありません。資産全体の設計を見直すことが重要です。
2026年の税制改正により、不動産による短期的な節税は難しくなり、資産全体のバランスを考えた長期戦略がこれまで以上に重要になりました。
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不動産購入による相続税対策のメリット
不動産購入が相続税対策として注目される理由は、税制上の評価方法を活用することで相続税の負担を抑えられる可能性があるためです。現金や預貯金は額面どおり100%で評価されますが、不動産は土地が路線価、建物が固定資産税評価額を基準に評価されるため、一般的に市場価格より低く算出されます。この仕組みによって、資産の評価額を圧縮しながら資産を保有できる点が大きな特徴です。
さらに、不動産は単なる節税手段ではなく、家賃収入や資産保全など複数のメリットを持つ資産でもあります。相続税対策として不動産を活用するメリットを整理すると、主に次のようなポイントが挙げられます。
- 現金より相続税評価額を下げやすい
- 賃貸収入によるキャッシュフローが生まれる
- 借入を活用することで課税対象財産を減らせる
- インフレ対策として資産価値を保ちやすい
- 小規模宅地等の特例を活用できる可能性がある
まず大きなメリットが「相続税評価額の圧縮」です。例えば同じ1億円の資産でも、現金として保有する場合は評価額がそのまま1億円になります。しかし、その資金で不動産を購入した場合、相続税評価額は時価より低くなるケースが多くあります。
| 資産の種類 | 評価方法 | 評価額の目安 |
| 現金・預貯金 | 額面評価 | 100% |
| 土地 | 路線価評価 | 時価の約70〜80% |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 建築費の約60〜70% |
この評価差によって、相続税の課税対象となる財産額を圧縮できる可能性があります。相続税は累進課税のため、評価額が下がるほど税率が低くなり、結果として税負担が軽くなる場合があります。
次に大きなメリットが「賃貸収入」です。不動産を賃貸物件として運用することで、家賃収入という継続的なキャッシュフローを得ることができます。相続税対策として不動産を購入する場合でも、単に節税だけを目的にするのではなく、安定した収益を生む資産として活用できる点は大きな魅力です。
また、賃貸物件の場合は「貸家建付地」や「貸家評価」が適用されるため、土地と建物の評価額がさらに下がる可能性があります。つまり、不動産を賃貸として運用することで、節税効果と収益性の両方を期待できるケースがあります。
さらに、不動産購入では金融機関からの借入を活用するケースもあります。この場合、借入金は相続時に「債務」として扱われるため、相続財産から差し引くことができます。これを債務控除と呼びます。
| 項目 | 金額の例 |
| 不動産評価額 | 7,000万円 |
| 借入金残高 | 5,000万円 |
| 課税対象財産 | 2,000万円 |
このように借入を活用すると、実際の資産価値よりも課税対象となる金額を抑えられる可能性があります。ただし、借入には返済義務や金利負担があるため、収益性や資金計画を十分に考慮することが重要です。
もう一つのメリットとして、不動産はインフレに強い資産といわれることがあります。現金は物価上昇によって実質価値が下がる可能性がありますが、不動産は物価や地価の上昇に伴って価値が上がる場合があります。そのため、長期的な資産保全という観点でも注目される資産です。
さらに、条件を満たせば「小規模宅地等の特例」を利用できる可能性もあります。この制度では、自宅の土地や賃貸用土地などについて評価額を大きく減額できる場合があります。
| 土地の種類 | 減額割合 | 限度面積 |
| 自宅用地 | 最大80% | 330㎡ |
| 貸付事業用地 | 最大50% | 200㎡ |
このように、不動産購入には複数のメリットがあり、相続税対策として有効に活用できる可能性があります。ただし、不動産には空室リスクや修繕費、価格下落などのリスクもあるため、節税だけを目的に物件を選ぶのは注意が必要です。収益性や立地、将来の売却可能性などを含めて総合的に判断することが重要になります。
相続税対策として不動産購入を検討する場合は、税制の仕組みを理解したうえで、長期的な資産運用の視点から計画を立てることが成功のポイントといえるでしょう。
不動産相続対策のデメリットと注意点
不動産購入は相続税対策として有効な手段の一つですが、メリットだけで判断すると大きなリスクにつながる可能性があります。相続税評価額を下げられる一方で、不動産には流動性の低さや管理負担など、現金にはない特徴があります。そのため、不動産による相続対策を検討する際は、節税効果だけでなくデメリットや注意点を理解しておくことが重要です。
まず知っておきたいのが、不動産は現金のように簡単に売却・分割できないという点です。相続が発生した際、相続人が複数いる場合は「誰が不動産を取得するのか」という問題が生じることがあります。場合によっては遺産分割トラブルにつながるケースもあるため、事前に相続方法を考えておくことが大切です。
不動産相続対策の主なデメリットは次のとおりです。
- 空室リスクや家賃下落の可能性がある
- 修繕費や管理費などの維持費がかかる
- 売却したくてもすぐに売れない場合がある
- 相続人間で遺産分割トラブルが起きやすい
- 税務調査で節税目的と判断される可能性がある
特に注意したいのが「収益リスク」です。賃貸不動産は入居者がいることで家賃収入が得られますが、空室が続いた場合は収入が減少します。また、築年数が経過すると修繕費や設備交換費用も増えていきます。節税効果だけを期待して収益性の低い物件を購入すると、結果的に資産価値が下がることもあります。
| リスクの種類 | 内容 | 対策のポイント |
| 空室リスク | 入居者がいない期間は家賃収入が減る | 賃貸需要の高い立地を選ぶ |
| 修繕リスク | 建物の老朽化により修繕費が発生 | 長期修繕計画を確認する |
| 価格下落リスク | 市場環境によって不動産価格が下がる | 資産価値のあるエリアを選ぶ |
| 流動性リスク | 売却したい時に買い手が見つからない | 将来の出口戦略を考える |
また、税制面でのリスクにも注意が必要です。近年は相続税対策としての不動産購入が増えたことから、税務当局によるチェックも厳しくなっています。節税目的だけで購入されたと判断されると、税務調査で評価方法が否認されるケースもあります。特に相続直前に購入した不動産は、租税回避と判断される可能性があるため注意が必要です。
さらに、2026年の税制改正によって導入される「5年ルール」も大きなポイントです。貸付用不動産については、相続開始前5年以内に取得した場合、従来の路線価評価ではなく取得価額に近い水準で評価される可能性があります。つまり、短期的な節税目的の不動産購入は効果が小さくなる可能性があります。
| 対策方法 | 従来の考え方 | 2026年以降の注意点 |
| 不動産購入 | 直前購入でも節税効果が大きい | 5年以上の保有が重要 |
| 賃貸物件運用 | 評価額を大きく圧縮できる | 収益性のある物件選びが必要 |
このように、不動産による相続税対策にはメリットと同時にさまざまなリスクがあります。そのため、節税だけを目的に物件を選ぶのではなく、長期的な資産運用として成立するかどうかを確認することが重要です。
不動産相続対策を成功させるためには、次のポイントを意識するとよいでしょう。
- 節税効果だけでなく収益性を確認する
- 長期保有を前提に物件を選ぶ
- 相続後の管理や売却方法を考えておく
- 税理士や不動産専門家に相談する
相続税対策としての不動産購入は、正しく活用すれば大きな効果が期待できます。しかし、リスクを理解しないまま進めると、相続後に家族の負担になることもあります。制度の仕組みと不動産の特徴を理解し、慎重に計画を立てることが重要です。
相続後に困らないための出口戦略(売却・分割の考え方)

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相続税対策として不動産を購入する場合、忘れてはいけないのが「出口戦略」です。出口戦略とは、相続が発生した後にその不動産をどのように扱うのかという計画のことです。不動産は現金のように自由に分けることができないため、相続後の処分方法を事前に考えておかないと、相続人同士のトラブルや資金不足につながる可能性があります。特に賃貸アパートやマンションなどの収益物件は、管理や運用を誰が引き継ぐのかを明確にしておくことが重要です。
相続後の不動産の扱い方にはいくつかの方法があります。代表的な方法は次の4つです。
| 分割方法 | 内容 | 特徴 |
| 現物分割 | 不動産そのものを相続人の一人が取得する | シンプルだが公平性の問題が出やすい |
| 代償分割 | 一人が不動産を取得し、他の相続人へ現金を支払う | 公平性を保ちやすい |
| 換価分割 | 不動産を売却し、その売却代金を分配する | 現金化できるため分割しやすい |
| 共有分割 | 複数の相続人で共有する | 管理や売却で意見が分かれやすい |
この中でも最もトラブルが起きやすいのが「共有」です。共有状態では、不動産の売却や建て替えなどの重要な意思決定に共有者全員の同意が必要になるため、意見が合わないと資産を動かせなくなることがあります。そのため、可能であれば共有を避け、現物分割や代償分割などの方法を検討する方が管理しやすいケースが多いといえます。
また、不動産は相続税の納税資金にも影響します。相続税は原則として現金で納付する必要があるため、不動産ばかりを相続すると納税資金が不足することがあります。そのため、相続対策では「納税資金をどう確保するか」という視点も重要です。
| 出口戦略 | メリット | 注意点 |
| 売却して現金化 | 相続人で公平に分配できる | 売却まで時間がかかる場合がある |
| 賃貸経営を継続 | 家賃収入を継続できる | 管理や修繕の負担がある |
| 一部売却 | 納税資金を確保できる | 土地の分割が必要になる場合がある |
さらに、2026年の税制改正により、不動産を利用した相続税対策は長期保有が前提になりました。そのため、購入時点から「将来売却できる物件かどうか」を意識することが大切です。立地が良く流動性の高い不動産であれば、相続後に売却して現金化することも比較的容易になります。
出口戦略を考える際には、次のポイントを確認しておくと安心です。
- 将来売却しやすい立地の物件か
- 相続人が管理できる物件か
- 納税資金を確保できる資産構成か
- 相続人間で分けやすい資産か
相続税対策として不動産を購入する場合、節税効果ばかりに目が向きがちですが、相続後の管理や処分方法まで考えておくことが重要です。購入時から出口戦略を意識しておくことで、相続人の負担を減らし、スムーズな資産承継につながります。
2026年改正を踏まえた相続税対策の進め方
2026年の税制改正により、不動産を活用した相続税対策の考え方は大きく変わりました。これまでのように「相続直前に不動産を購入して評価額を下げる」という短期的な節税手法は効果が限定され、今後は長期的な資産計画を前提とした対策が重要になります。特に貸付用不動産については、取得から5年以内の相続では取得価額に近い評価が行われる可能性があるため、計画的な資産形成が必要です。
そのため、これから相続税対策を進める場合は、単に不動産を購入するだけではなく「いつ購入するか」「どの資産を残すか」「相続後の運用をどうするか」といった視点を含めて検討することが重要になります。
まず最初に行うべきなのは、自分の資産状況を正確に把握することです。相続税はすべての財産を合計した評価額で計算されるため、現金・不動産・有価証券などを含めた全体の資産構成を確認する必要があります。
| 確認項目 | 内容 | 目的 |
| 資産の棚卸し | 現金・不動産・株式などを整理 | 相続税の対象財産を把握する |
| 評価額の確認 | 不動産評価額や金融資産を試算 | 課税対象額を把握する |
| 相続人の確認 | 配偶者・子どもなどの人数 | 基礎控除額を確認する |
次に重要なのが、相続税の試算です。相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人数」という基礎控除があるため、この金額を超えるかどうかによって対策の必要性が変わります。まずは現状の資産でどの程度の相続税が発生するのかをシミュレーションすることが大切です。
相続税対策の基本的な進め方は、次のようなステップで考えるとわかりやすくなります。
- 現在の資産状況を整理する
- 相続税額を試算する
- 節税効果のある資産配分を検討する
- 不動産購入などの具体的対策を実行する
- 相続後の分割や管理方法を決めておく
特に2026年以降は、不動産購入のタイミングが重要になります。短期間での節税が難しくなったため、相続発生までの期間を考慮した長期計画が必要です。
| 対策方法 | 改正前の考え方 | 2026年以降の考え方 |
| 不動産購入 | 相続直前の購入でも節税可能 | 5年以上の保有が前提 |
| 賃貸不動産 | 評価額圧縮が主目的 | 収益性も重視 |
| 資産分散 | 節税中心 | 相続後の管理も考慮 |
また、相続税対策では「納税資金」を確保することも重要です。相続税は原則として現金で納付する必要があるため、不動産ばかりの資産構成になってしまうと、相続人が納税資金を用意できないケースもあります。そのため、不動産と現金のバランスを考えることも大切です。
さらに、相続税対策では家族との共有も欠かせません。不動産は相続後の管理や運用を誰が行うのかによって、相続人の負担が大きく変わります。事前に家族と話し合い、誰がどの資産を引き継ぐのかをある程度決めておくことで、相続時のトラブルを防ぐことができます。
2026年以降の相続税対策では、次のポイントを意識すると効果的です。
- 短期節税ではなく長期資産戦略で考える
- 収益性のある不動産を選ぶ
- 相続後の分割や売却まで想定する
- 税理士など専門家と相談しながら進める
税制改正によって不動産による相続税対策のルールは変化していますが、適切に計画すれば依然として有効な方法であることに変わりはありません。重要なのは、節税だけにとらわれず、資産の管理・運用・承継まで含めた総合的な視点で対策を進めることです。
まとめ|不動産を活用した相続税対策のポイント
- 相続税は財産の税法上の評価額をもとに計算されるため、現金よりも評価額が低くなりやすい不動産は相続税対策として活用されることが多い。
- 不動産は土地(路線価)・建物(固定資産税評価額)で評価されるため、一般的に時価より低く評価され、課税対象となる財産額を圧縮できる可能性がある。
- 賃貸不動産として運用すると貸家・貸家建付地評価が適用され、土地・建物の評価額がさらに下がる場合がある。
- 金融機関からの借入を利用して不動産を購入した場合、借入金は債務控除として相続財産から差し引けるため、課税対象額を減らせる可能性がある。
- 自宅や事業用土地では小規模宅地等の特例(最大80%減額)を利用できるケースがあり、大きな節税効果につながる可能性がある。
- 2026年の税制改正では相続前5年以内に取得した貸付用不動産の評価方法が見直され、短期的な節税目的の不動産購入は効果が限定される可能性がある。
- 今後の相続税対策では「短期節税」ではなく5年以上の長期保有を前提とした資産戦略が重要になる。
- 不動産は節税効果だけでなく、賃貸収入・資産保全・インフレ対策などのメリットを持つ一方、空室リスクや修繕費、価格下落などのリスクもある。
- 相続後のトラブルを防ぐためには、売却・分割・管理などの出口戦略を購入前から検討しておくことが重要。
- 相続税対策として不動産購入を検討する場合は、税務・不動産の両面から専門家と相談しながら、長期的な資産承継の視点で計画を立てることが成功のポイントとなる。


