「自分の家には相続税は関係ない」と思っていませんか。しかし実際には、都市部の持ち家や土地を所有しているだけで、相続税の課税対象になるケースは珍しくありません。預貯金がそれほど多くなくても、不動産の評価額が高ければ基礎控除を超えてしまうことがあるためです。さらに近年は税制改正により、生前贈与のルール変更やタワーマンション評価の見直しなど、相続税対策の考え方も大きく変わりつつあります。これまで有効とされてきた方法でも、現在では思ったほど節税効果が出ない場合もあり、早めの準備がより重要になっています。
この記事では、相続税対策が必要な人の特徴から、相続税がかかるかどうかを判断する基礎控除の計算方法、2026年時点の税制改正のポイントまでをわかりやすく解説します。さらに、生命保険・生前贈与・小規模宅地等の特例といった基本的な対策や、不動産を持つ家庭が注意すべきポイント、二次相続で税負担が増えるケースなども具体例を交えて整理しています。将来の相続で家族が困らないためにも、まずは自分の資産状況を把握することが重要です。本記事を通じて、相続税対策の全体像と、今からできる準備を一緒に確認していきましょう。
※本記事に掲載されている情報は、2026年3月時点の税制および関連法令に基づき、一般的な解釈をまとめたものです。実際の相続税額の算定や特例の適用可否については、個別の資産状況、家族構成、管轄の税務署の判断等により異なります。本記事の情報を用いて行う一切の行為について、当サイトおよび執筆者は何ら責任を負うものではありません。具体的な相続対策にあたっては、必ず税理士や弁護士などの専門家、または最寄りの税務署にご相談ください。
相続税対策が必要な人とは?まず知っておくべき基本ルール

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相続税対策が必要かどうかを判断するうえで、最初に押さえたい基本ルールはとてもシンプルです。結論から言うと、相続税対策が必要な人とは、被相続人の正味の遺産総額が基礎控除額を超える可能性がある人を指します。つまり、預貯金が多い人だけでなく、自宅の土地や賃貸不動産、株式、生命保険金などを合算した結果、一定額を超えそうであれば早めの確認が必要です。
ここで重要なのは、「相続税がかかる人=富裕層だけ」とは限らない点です。特に都市部では、土地の評価額が高いため、一般的な持ち家世帯でも相続税の対象になることがあります。現金はそれほど多くなくても、不動産の評価額が高ければ課税ラインを超えることは珍しくありません。このため、まずは財産の種類を問わず、全体像を把握することが出発点になります。
相続税の判定では、単純に持っている財産の合計を見るのではなく、一定のルールに基づいて「正味の遺産額」を計算します。基本的には、預貯金、不動産、有価証券、死亡保険金などの財産を合計し、借入金や未払金、葬式費用などを差し引いて算出します。そのうえで、法定相続人の数に応じた基礎控除額を超えるかどうかを確認します。
まず押さえておきたい基本項目を整理すると、次のとおりです。
- 相続税はすべての家庭にかかるわけではない
- 判断基準は正味の遺産額が基礎控除額を超えるかどうか
- 預貯金だけでなく不動産や株式も対象になる
- 配偶者がいる場合でも将来の二次相続まで見据える必要がある
- 2026年時点では不動産評価や生前贈与の扱いにも注意が必要
相続税の基本的な判定基準となるのが、基礎控除です。基礎控除とは、相続税がかからない非課税枠のことで、法定相続人の人数によって金額が変わります。計算式は次のとおりです。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、配偶者と子ども2人の合計3人が法定相続人であれば、基礎控除額は4,800万円です。この場合、正味の遺産額が4,800万円以下であれば、原則として相続税はかかりません。一方で、これを超える場合は、相続税の申告や対策を検討する必要があります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 判断の目安 |
| 1人 | 3,600万円 | 遺産総額が3,600万円を超えると課税対象の可能性 |
| 2人 | 4,200万円 | 自宅と預貯金だけでも超えるケースがある |
| 3人 | 4,800万円 | 都市部の不動産があると要注意 |
| 4人 | 5,400万円 | 不動産と金融資産の合計で確認が必要 |
表からわかるように、相続人の数が増えるほど基礎控除額は大きくなります。ただし、相続人が少ない家庭では非課税枠が小さくなるため、同じ財産額でも税負担が発生しやすくなります。特に子どもが1人だけの家庭や、配偶者がすでに亡くなっているケースでは、相続税対策の必要性が高まりやすいです。
また、相続税対策が必要かどうかを考える際は、「今の相続」だけでなく「次の相続」も見ておく必要があります。よくあるのが、一次相続では配偶者の税額軽減によって税負担が抑えられても、配偶者が亡くなったあとの二次相続で子どもに重い相続税がかかるケースです。一次相続で安心してしまうと、結果として家族全体の税負担が大きくなることがあります。
さらに、2026年時点では、相続税対策の定番とされてきた方法にも見直しが進んでいます。たとえば、生前贈与は以前より持ち戻しの対象期間が長くなっており、直前の対策では効果が出にくくなっています。不動産についても、タワーマンション評価の適正化や不動産評価の見直しが進み、単純に物件を買えば評価を圧縮できるという時代ではなくなりました。早めに全体設計を行うことが、これまで以上に重要になっています。
では、どのような人が特に相続税対策を意識すべきなのでしょうか。代表的なのは、次のようなケースです。
- 都市部に持ち家や土地を所有している人
- 預貯金や株式などの金融資産が多い人
- 賃貸不動産を保有している人
- 会社経営者や個人事業主で自社株や事業資産がある人
- 相続人が少なく基礎控除額が小さい人
- 二次相続まで含めて資産承継を考える必要がある人
このように見ると、相続税対策が必要な人は一部の資産家だけではありません。むしろ、家と預貯金を持つ一般的な家庭でも、地域や家族構成によっては十分に対象になり得ます。だからこそ、感覚で「まだ大丈夫だろう」と判断せず、まずは基礎控除と財産総額を照らし合わせて確認することが大切です。
注意したいのは、相続税の負担は税額そのものだけではない点です。実際には、納税資金をどう準備するか、誰がどの財産を引き継ぐか、遺産分割で家族間の認識にズレがないかといった問題も同時に発生します。つまり、相続税対策は単なる節税策ではなく、家族が将来困らないようにするための準備でもあります。
この見出しで押さえるべき結論は明確です。相続税対策が必要かどうかは、まず正味の遺産額が基礎控除額を超えるかで判断します。そして、超える可能性が少しでもあるなら、節税だけでなく納税資金や分割対策も含めて、早い段階から確認を始めることが重要です。
相続税がかかるか判断する基礎控除の計算方法

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相続税対策を考える前に、まず確認すべきなのが「相続税がかかるかどうか」です。その判断の基準となるのが基礎控除です。基礎控除とは、相続税が課税されない非課税枠のことで、この金額を超えた部分に対してのみ相続税が課されます。つまり、遺産総額が基礎控除額以内であれば、原則として相続税はかかりません。
基礎控除の計算は、次のシンプルな計算式で求められます。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
この式からわかるように、相続人の人数が増えるほど非課税枠は大きくなります。したがって、同じ遺産額でも、相続人の人数によって相続税の発生有無が変わることがあります。
まずは、法定相続人の人数ごとの基礎控除額を確認してみましょう。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 課税判断の目安 |
| 1人 | 3,600万円 | 遺産総額が3,600万円を超えると課税の可能性 |
| 2人 | 4,200万円 | 自宅+預貯金がある家庭は要確認 |
| 3人 | 4,800万円 | 都市部の土地がある場合は超えるケースが多い |
| 4人 | 5,400万円 | 不動産と金融資産を合わせて確認 |
例えば、配偶者と子ども2人の合計3人が法定相続人の場合、基礎控除額は4,800万円です。この場合、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。しかし、5,000万円であれば200万円が課税対象となるため、相続税の申告や納税が必要になる可能性があります。
ここで注意したいのは、「遺産総額」と「正味の遺産額」は同じではないという点です。相続税の計算では、単純な資産の合計ではなく、以下のような計算を行います。
- 預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 株式や投資信託などの有価証券
- 死亡保険金
- 退職金
これらの財産を合計した後、次の費用を差し引きます。
- 借入金や住宅ローン
- 未払い金
- 葬式費用
この計算によって算出されたものが正味の遺産額であり、この金額が基礎控除を超えるかどうかで相続税の課税が判断されます。
また、見落としやすいポイントとして、相続税の対象になる財産には現金や不動産だけでなく、保険金や退職金なども含まれることがあります。特に生命保険は「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があるものの、それを超えた部分は相続税の対象になるため注意が必要です。
さらに、相続税が発生するかどうかを正確に判断するためには、財産の評価方法も重要になります。不動産の場合は市場価格ではなく「相続税評価額(路線価など)」で計算するため、実際の売却価格とは異なることがあります。そのため、土地や建物を所有している場合は、思っている以上に評価額が高くなるケースもあります。
相続税がかかるかどうかを判断するための基本ステップを整理すると、次の流れになります。
- 財産の種類をすべて洗い出す
- 不動産や金融資産を含めた遺産総額を計算する
- 借入金や葬式費用などを差し引く
- 正味の遺産額を算出する
- 基礎控除額と比較して課税の有無を判断する
このように、基礎控除の計算方法を理解しておくことで、自分の家庭に相続税がかかる可能性があるのかをおおよそ判断できます。もし基礎控除を超えそうな場合は、早めに相続税対策を検討することが重要です。生前贈与や生命保険の活用など、早期に準備することで大きな節税効果が期待できるためです。
まずは、現在の資産総額と法定相続人の人数を確認し、基礎控除額と比較することから始めてみてください。それだけでも、相続税対策が必要かどうかの大まかな目安を把握することができます。
基礎控除の早見表|法定相続人の人数ごとの非課税ライン

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相続税が発生するかどうかを判断する際、最も重要になるのが「基礎控除」です。基礎控除とは、相続税が課税されない非課税枠のことで、正味の遺産額がこの金額以内であれば原則として相続税はかかりません。逆に、この基礎控除額を超えると相続税の申告や納税が必要になる可能性があります。
基礎控除額は、次の計算式で求められます。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
つまり、法定相続人が多いほど非課税枠は大きくなり、相続税がかかりにくくなります。ここでは、実際の判断に使いやすいように、法定相続人の人数ごとの基礎控除額を早見表でまとめました(2026年3月時点の税制に基づく。基礎控除額に改正はありません)。
| 法定相続人の人数 | 基礎控除額(非課税ライン) | 課税判断の目安 |
| 1人 | 3,600万円 | 遺産総額が3,600万円を超えると相続税の対象になる可能性 |
| 2人 | 4,200万円 | 自宅と預貯金がある場合は超えるケースも多い |
| 3人 | 4,800万円 | 都市部の土地があると課税ラインを超えやすい |
| 4人 | 5,400万円 | 不動産+金融資産の合計で確認が必要 |
| 5人 | 6,000万円 | 資産が多い家庭でも非課税になる可能性が高まる |
例えば、配偶者と子ども2人の合計3人が法定相続人の場合、基礎控除額は4,800万円になります。遺産総額が4,500万円であれば相続税は発生しませんが、5,000万円であれば200万円が課税対象となる可能性があります。
ただし、この判断は単純な預貯金の額だけで決まるわけではありません。相続税の計算では、以下のような財産もすべて含めて評価します。
- 預貯金
- 土地・建物などの不動産
- 株式・投資信託などの有価証券
- 死亡保険金
- 退職金
特に注意したいのが不動産です。自宅の土地は市場価格ではなく「路線価」で評価されますが、都市部ではそれでも数千万円になることが多く、預貯金がそれほど多くなくても基礎控除を超えるケースがあります。そのため、「家と少しの預金しかないから大丈夫」と思っていても、実際には相続税の対象になる場合があります。
また、基礎控除を判断する際は「法定相続人の人数」を正しく把握することも重要です。法定相続人とは、民法で定められた相続権を持つ人のことで、基本的には次の優先順位で決まります。
- 常に相続人になる:配偶者
- 第一順位:子ども(代襲相続含む)
- 第二順位:父母(子どもがいない場合)
- 第三順位:兄弟姉妹(子どもも親もいない場合)
つまり、配偶者と子どもがいる家庭では、その人数がそのまま法定相続人の数になります。一方で、子どもがいない場合は親が相続人になり、さらに親もいない場合には兄弟姉妹が相続人になります。養子は実子がいる場合1人まで、実子がいない場合2人まで法定相続人に含められますが、相続税対策としての養子縁組には制限や注意点があります。
ここで覚えておきたいポイントを整理すると次のとおりです。
- 相続税がかかるかは基礎控除を超えるかで判断する
- 基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算
- 不動産や保険金なども含めて正味の遺産額を計算する
- 都市部の持ち家だけで基礎控除を超えることもある
- まずは財産の総額を把握することが重要
相続税対策が必要な人かどうかを判断する第一歩は、この基礎控除ラインを把握することです。もし遺産総額が基礎控除を超える可能性がある場合は、生前贈与や生命保険の活用、不動産の評価対策など、早めに準備を進めることで将来の税負担を大きく減らせる可能性があります。詳細は国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」などでシミュレーションをおすすめします。
相続税対策が必要な人の具体的な特徴
相続税対策が必要な人かどうかを判断するには、単に資産額を見るだけではなく、資産の内容や家族構成も含めて考える必要があります。一般的に、相続税対策が必要な人とは遺産総額が基礎控除を超える可能性がある人ですが、実際にはそれ以外にも注意すべき特徴があります。ここでは、相続税が発生しやすい代表的なケースを具体的に解説します。
まず理解しておきたいのは、相続税がかかる人は決して一部の富裕層だけではないという点です。特に都市部では土地の評価額が高いため、一般的な持ち家世帯でも相続税の対象になるケースがあります。ここでは、相続税対策を検討すべき人の特徴を整理して紹介します。
相続税対策が必要になりやすい主な特徴
- 都市部に自宅や土地を所有している
- 預貯金や株式などの金融資産が多い
- 賃貸アパートやマンションなどの不動産を持っている
- 会社経営者・個人事業主で自社株を持っている
- 相続人が少なく基礎控除額が小さい
- 将来の二次相続まで考える必要がある
それぞれの特徴について、もう少し具体的に見ていきましょう。
①都市部に不動産を持っている人
相続税が発生する大きな要因の一つが不動産です。土地は「路線価」という評価基準で計算されますが、都市部ではこの評価額が非常に高くなる傾向があります。そのため、自宅の土地と建物だけで基礎控除額を超えてしまうケースも珍しくありません。
例えば、次のような資産構成でも相続税の対象になる可能性があります。
| 資産の種類 | 評価額の例 |
| 自宅の土地 | 4,000万円 |
| 自宅の建物 | 800万円 |
| 預貯金 | 500万円 |
| 合計 | 5,300万円 |
このケースでは、法定相続人が2人の場合の基礎控除額4,200万円を超えるため、相続税の対象になる可能性があります。
②金融資産が多い人
預貯金や株式、投資信託などの金融資産が多い場合も、相続税が発生しやすくなります。金融資産は評価額がそのまま課税対象になるため、節税の余地が少ない資産でもあります。
特に次のような人は注意が必要です。
- 退職金や老後資金として多額の預貯金がある
- 株式投資で資産が増えている
- 複数の金融資産を保有している
金融資産は分割しやすいメリットがありますが、その分、評価額がそのまま課税対象になるため、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
③賃貸不動産を持っている人
アパートやマンションなどの賃貸不動産を所有している場合、資産額が大きくなりやすいため相続税対策が重要になります。賃貸不動産は評価額を下げる特例もありますが、土地と建物を合わせると総資産額が高額になるケースが多いです。
また、賃貸不動産は次のような問題も発生しやすくなります。
- 相続人同士で分割しにくい
- 管理や修繕の負担が発生する
- 売却しないと納税資金を確保できない場合がある
そのため、賃貸不動産を所有している場合は、節税だけでなく遺産分割や納税資金の準備も含めた対策が必要になります。
④会社経営者や個人事業主
会社経営者や個人事業主の場合、自社株や事業資産が相続財産になります。会社の業績が良いほど株価が高く評価されるため、相続税が大きくなるケースがあります。
特に注意したいのが自社株です。非上場企業でも株式評価額が数千万円から数億円になることもあり、後継者が多額の相続税を負担するケースがあります。
このため、事業承継を予定している場合は、次のような対策が検討されます。
- 自社株の評価対策
- 事業承継税制の活用
- 後継者への生前贈与
⑤相続人が少ない人
相続税は、法定相続人の人数によって基礎控除額が変わります。相続人が少ない家庭では非課税枠が小さくなるため、同じ資産額でも相続税が発生しやすくなります。
| 相続人 | 基礎控除額 |
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
例えば、子どもが1人しかいない家庭では基礎控除が3,600万円になるため、持ち家と預貯金だけでも相続税が発生する可能性があります。
このように見ると、相続税対策が必要な人は一部の資産家に限られません。都市部の持ち家世帯や金融資産を持つ家庭など、一般的な家庭でも対象になるケースがあります。まずは自分の資産構成と家族構成を整理し、基礎控除を超える可能性があるかどうかを確認することが、相続税対策の第一歩になります。
不動産を持っている人が相続税対策を検討すべき理由

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相続税対策が必要な人の中でも、特に注意が必要なのが不動産を所有している人です。なぜなら、不動産は評価額が高くなりやすく、遺産の中でも大きな割合を占めることが多いためです。特に都市部では土地の評価額が高いため、預貯金がそれほど多くなくても、自宅の土地と建物だけで相続税の基礎控除を超えてしまうケースも珍しくありません。
相続税の計算では、不動産は「実際の売却価格」ではなく、税法で定められた評価方法によって算出されます。土地は主に路線価、建物は固定資産税評価額を基準に計算されます。この評価額が思っている以上に高くなることがあり、結果として相続税の対象になることがあります。
例えば、一般的な家庭でも次のような資産構成で相続税が発生する可能性があります。
| 資産の種類 | 評価額の例 |
| 自宅の土地 | 4,500万円 |
| 自宅の建物 | 700万円 |
| 預貯金 | 800万円 |
| 合計 | 6,000万円 |
この場合、法定相続人が2人であれば基礎控除は4,200万円です。遺産総額が6,000万円であれば1,800万円が課税対象となる可能性があります。つまり、特別な資産家でなくても、持ち家のある家庭では相続税が発生するケースが十分にあり得ます。
また、不動産にはもう一つ大きな特徴があります。それは分割しにくい資産であるという点です。預貯金であれば相続人同士で分けることは簡単ですが、不動産は物理的に分割することが難しいため、遺産分割でトラブルになるケースがあります。
不動産相続でよく起こる問題は次のとおりです。
- 相続人同士で公平に分けにくい
- 誰が不動産を相続するかで揉めやすい
- 売却しないと納税資金を準備できない場合がある
- 共有名義になると将来的な売却や管理が難しくなる
さらに、相続税は原則として現金で納税する必要があります。不動産は資産価値が高くても、すぐに現金化できるとは限りません。そのため、不動産の評価額が高い場合、納税資金を確保するために土地や建物を売却しなければならないケースもあります。
不動産を所有している人が相続税対策を検討すべき理由をまとめると次のようになります。
| 理由 | 内容 |
| 評価額が高くなりやすい | 都市部では土地の評価額だけで基礎控除を超えることがある |
| 遺産の割合が大きい | 遺産の大半を不動産が占めるケースが多い |
| 分割が難しい | 相続人同士で公平に分けにくい |
| 納税資金が不足しやすい | 現金が少ないと売却が必要になることがある |
また、近年の税制改正によって不動産を使った節税方法も変化しています。特にタワーマンションを利用した節税は評価方法の見直しにより、以前ほど大きな効果が得られないケースも増えています。そのため、不動産を利用した相続税対策は、より計画的に行う必要があります。
不動産を持っている人が検討すべき主な対策には、次のようなものがあります。
- 小規模宅地等の特例の活用
- 賃貸不動産の評価減の活用
- 生前贈与による資産分散
- 生命保険を利用した納税資金の確保
- 遺言書による遺産分割の明確化
このように、不動産を所有している場合は、相続税が発生する可能性だけでなく、納税資金や遺産分割の問題も含めて考える必要があります。相続が発生してからでは対策できる範囲が限られるため、早い段階から資産の状況を整理し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
二次相続で税額が増えるケースとは

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相続税対策を考えるうえで見落とされがちなのが二次相続です。二次相続とは、夫婦のどちらかが亡くなったときの相続(一次相続)の後、残された配偶者が亡くなった際に発生する相続のことを指します。実務では、この二次相続のタイミングで相続税の負担が大きくなるケースが多く見られます。
その理由は、一次相続では配偶者の税額軽減という非常に大きな特例が使えるためです。この制度により、配偶者は次のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
- 1億6,000万円まで
- 法定相続分まで
この制度のおかげで、一次相続では相続税がほとんど発生しないケースも多くあります。しかし問題は、その後の二次相続です。配偶者が亡くなると、この特例は使えなくなるため、子どもに対してまとまった相続税が課されることがあります。
二次相続で税額が増える主な理由は次のとおりです。
- 配偶者控除が使えなくなる
- 法定相続人の人数が減る
- 基礎控除額が小さくなる
- 配偶者の財産も合算される
例えば、夫が亡くなった一次相続では、配偶者と子ども2人が相続人になるケースを考えてみましょう。
| 項目 | 一次相続 | 二次相続 |
| 相続人 | 配偶者+子2人 | 子2人 |
| 基礎控除 | 4,800万円 | 4,200万円 |
| 配偶者控除 | 利用可能 | 利用不可 |
このように、二次相続では法定相続人が減るため基礎控除額が小さくなります。さらに配偶者控除が使えなくなるため、同じ資産額でも相続税が大きくなる可能性があります。
具体例で考えてみましょう。夫婦の総資産が8,000万円あったとします。
| 相続の段階 | 資産状況 | 課税の可能性 |
| 一次相続 | 配偶者が多く相続 | 配偶者控除で税額が抑えられる |
| 二次相続 | 子ども2人が相続 | 控除が減り税額が増える |
このように、一次相続では税額を抑えられても、結果的に二次相続で税負担が増えてしまうことがあります。つまり、一次相続だけを見て判断すると、家族全体の税負担が大きくなる可能性があるのです。
そのため、相続税対策では二次相続まで含めたシミュレーションが重要になります。例えば次のような方法があります。
- 配偶者だけでなく子どもにも一部財産を分ける
- 生前贈与で資産を分散する
- 生命保険を活用して納税資金を準備する
- 小規模宅地等の特例の活用を検討する
特に不動産を多く持っている家庭では、二次相続の影響が大きくなる傾向があります。配偶者が自宅を相続しても、次の相続では子どもが土地を相続することになるため、相続税の負担が急に増えることがあります。
このように、相続税対策を考える際は「一次相続だけを見ないこと」が重要です。家族全体の税負担を最小限に抑えるためには、一次相続と二次相続をセットで考える必要があります。特に資産額が基礎控除を超える可能性がある場合は、早めにシミュレーションを行い、長期的な相続対策を検討しておくことが大切です。
2026年の税制改正で変わった相続税対策のポイント
相続税対策は長年ほぼ同じ方法が使われてきましたが、近年は税制改正によってルールが大きく変わりつつあります。特に2024年(令和6年)以降の改正では、生前贈与の持ち戻し期間延長や不動産評価の見直しが進み、従来の「直前対策」が通用しにくくなりました。2026年(令和8年)時点では、これらの改正が段階的に影響を及ぼしており、相続税対策を検討する場合は最新のルールを理解したうえで計画を立てることが重要です。
まず押さえておきたいのは、相続税対策が「早めに始めるほど有利」という点がこれまで以上に強くなったことです。制度変更によって短期間での節税が難しくなり、長期的な資産移転がより重要になっています。
2026年時点で重要な税制改正ポイント(主に2024年改正の影響と2026年改正の新要素)
- 生前贈与の持ち戻し期間が段階的に3年から7年に延長(2024年改正、2026年は移行期)
- 相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設(2024年1月1日以降適用)
- 区分所有マンション(タワーマンションなど)の評価見直し(2024年1月1日以降適用)
- 貸付用不動産・不動産小口化商品の評価適正化(2026年改正、令和9年1月1日以降適用予定)
それぞれの改正内容を順番に見ていきましょう。
①生前贈与の持ち戻し期間の延長
これまで、生前贈与は相続開始前3年以内の贈与が相続財産に加算される仕組みでした。しかし2024年(令和6年)改正により、令和6年1月1日以降の贈与について、加算対象期間が段階的に延長されています。2026年(令和8年)時点ではまだ完全7年ではなく、移行期にあたります。
| 相続開始日 | 加算対象期間 | 詳細 |
| ~2026年12月31日 | 相続開始前3年以内 | 従来通り |
| 2027年~2030年 | 2024年1月1日~相続開始日まで(段階的に4~7年) | 移行期、合計額から100万円控除あり |
| 2031年以降 | 相続開始前7年以内 | 完全適用(3年以内全額 + 4~7年前合計100万円控除) |
つまり、亡くなる直前にまとめて贈与をしても節税効果が得られにくくなりました。この改正により、相続税対策は「早く始めるほど有利」という傾向がさらに強くなっています。
②相続時精算課税制度の見直し
相続時精算課税制度は、累積2,500万円まで贈与税がかからない制度ですが、これまでは利用すると暦年贈与(110万円非課税)を使えないデメリットがありました。
しかし2024年(令和6年)1月1日以降の改正で、この制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。これにより、相続時精算課税制度を選択していても、毎年110万円までの贈与は贈与税非課税・申告不要となり、資産移転の選択肢が広がっています。
③タワーマンション評価の見直し
これまでタワーマンションは市場価格と相続税評価額の差を利用した節税方法として知られていました。しかし2024年(令和6年)1月1日以降の改正で、区分所有マンションの評価方法が見直され、市場価格との乖離が大きい場合(評価乖離率1.67倍以上など)、相続税評価額が市場価格の60%水準になるよう補正が入ります。特に高層階・築浅の物件ほど影響が大きく、以前ほどの節税効果が得られないケースが増えています。
| 項目 | 従来 | 改正後(2024年1月1日以降) |
| 評価額 | 市場価格より大幅に低い(高層階ほど乖離大) | 市場価格の60%水準に補正(乖離が大きい場合) |
| 節税効果 | 大きい | 縮小 |
そのため、単純にタワーマンションを購入すれば節税できるという時代ではなくなりました。
④不動産評価の適正化(2026年改正の新ポイント)
2026年(令和8年)税制改正大綱では、貸付用不動産(賃貸アパートなど)および不動産小口化商品の評価が見直されました。主な内容は以下のとおりで、令和9年(2027年)1月1日以降の相続・贈与から適用予定です。
- 相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産:通常の取引価額(時価)で評価(ただし取得価額ベースで80%まで緩和可能な場合あり)
- 不動産小口化商品:取得時期を問わず時価で評価
これにより、相続直前の「駆け込み不動産節税」のリスクがさらに高くなっています。監視強化が進み、節税目的の短期取得は効果が出にくくなりました。
このように、税制改正によって相続税対策の考え方は大きく変化しています。ポイントをまとめると次のとおりです。
- 短期的な節税は難しくなっている
- 生前贈与は早期に開始することが重要
- 不動産節税は慎重に判断する必要がある(特に直前取得は避ける)
- 長期的な資産移転計画が重要になっている
つまり、2026年の相続税対策は「テクニック型の節税」から「長期的な資産設計」に変わりつつあります。資産の種類や家族構成によって最適な対策は異なるため、早い段階で資産状況を整理し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することが重要です。最新の税制は国税庁サイトや専門家で確認してください。
タワマン節税規制と不動産評価見直しの影響
相続税対策の中でも長年注目されてきた方法の一つが「タワーマンション節税」です。これは、マンションの相続税評価額が市場価格より低く算定される仕組みを利用した節税方法で、特に高層階の物件ほど効果が高いとされてきました。しかし近年、この仕組みを利用した過度な節税を防ぐため、国税庁は評価方法の見直しを行い、いわゆるタワマン節税規制が導入されました。
従来の制度では、タワーマンションの相続税評価額は主に「固定資産税評価額」を基準に計算されていました。この評価額は実際の市場価格よりも低いことが多く、特に高層階のマンションでは市場価格との差が大きくなる傾向がありました。その結果、同じ価格帯の資産でも、タワーマンションを購入することで相続税評価額を大きく下げることができたのです。
しかし、この仕組みを利用した節税が広がったことから、2024年以降は評価方法が見直され、市場価格との乖離を補正する仕組みが導入されています。
| 項目 | 従来の評価方法 | 見直し後 |
| 評価基準 | 固定資産税評価額中心 | 市場価格との乖離を補正 |
| 高層階の評価 | 低く評価されやすい | 評価額が引き上げられる可能性 |
| 節税効果 | 大きい | 縮小傾向 |
この改正により、単純にタワーマンションを購入すれば相続税評価額を下げられるという状況ではなくなりました。特に市場価格と相続税評価額の差が大きい物件ほど補正が入りやすくなり、従来ほどの節税効果が期待できないケースも増えています。
また、タワマン節税規制とあわせて、不動産評価全体に対する税務当局のチェックも強化されています。過去には「不動産を購入して評価額を下げる」という節税手法が広く知られていましたが、現在は次のような点がより厳しく見られるようになっています。
- 相続直前に購入した不動産
- 市場価格と評価額の差が極端に大きい物件
- 節税目的が明確と判断される取引
特に問題になりやすいのが、相続直前の不動産購入です。税務当局は「節税目的のみの不動産取得」と判断した場合、通常の評価方法ではなく実勢価格(市場価格)に近い評価で課税することがあります。
| ケース | 税務上の判断 |
| 長期保有の不動産 | 通常の評価方法が適用される |
| 相続直前の購入 | 実勢価格で評価される可能性 |
| 節税目的と判断された場合 | 評価方法が否認されることもある |
このような背景から、現在の相続税対策では「不動産を購入すれば節税できる」という単純な考え方は通用しにくくなっています。不動産は依然として有効な資産ではありますが、節税効果だけを目的にした投資はリスクを伴う可能性があります。
そのため、不動産を活用した相続税対策を検討する場合は、次のポイントを意識することが重要です。
- 節税だけでなく資産運用としての価値も考える
- 長期的な保有を前提に計画する
- 市場価格と相続税評価額の差を確認する
- 税理士など専門家の意見を参考にする
このように、タワマン節税規制と不動産評価の見直しによって、相続税対策の考え方は大きく変化しています。今後は短期的な節税テクニックよりも、長期的な資産管理や計画的な資産移転がより重要になっていくと考えられます。不動産を保有している人や購入を検討している人は、最新の税制を踏まえたうえで慎重に対策を進めることが大切です。
相続税対策の基本3つ|生命保険・生前贈与・小規模宅地の特例
相続税対策にはさまざまな方法がありますが、その中でも多くの家庭で活用されている代表的な対策が「生命保険」「生前贈与」「小規模宅地等の特例」の3つです。これらは比較的利用しやすく、正しく活用することで相続税の負担を大きく減らすことができます。相続税対策を考える際は、まずこの3つの基本制度を理解しておくことが重要です。
まずは、それぞれの特徴を整理してみましょう。
| 対策方法 | 主な効果 | 向いている人 |
| 生命保険 | 非課税枠を活用して相続税を軽減 | 納税資金を準備したい人 |
| 生前贈与 | 相続財産を事前に減らせる | 長期的に資産を移転したい人 |
| 小規模宅地等の特例 | 土地評価を最大80%減額 | 自宅や賃貸不動産を相続する人 |
それぞれの制度について、具体的に見ていきましょう。
①生命保険の非課税枠を活用する
生命保険は、相続税対策として非常に効果的な方法の一つです。死亡保険金には次の非課税枠が設けられています。
500万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が3人の場合は1,500万円まで相続税がかかりません。現金をそのまま相続する場合は課税対象になりますが、生命保険として受け取ることで一定額を非課税にできます。
さらに生命保険には、次のようなメリットがあります。
- 相続税の非課税枠が使える
- 納税資金を確実に準備できる
- 受取人を指定できるため分割トラブルを防ぎやすい
特に、不動産が多く現金が少ない家庭では、相続税の納税資金を確保する手段として生命保険が活用されています。
②生前贈与で相続財産を減らす
生前贈与は、相続が発生する前に財産を家族へ移転することで、相続財産を減らす方法です。代表的な制度が暦年贈与で、年間110万円までの贈与は贈与税がかかりません。
例えば、子ども2人に毎年110万円ずつ贈与した場合、次のような資産移転が可能になります。
| 贈与期間 | 1人あたりの贈与額 | 2人合計 |
| 10年間 | 1,100万円 | 2,200万円 |
| 20年間 | 2,200万円 | 4,400万円 |
このように、長期間にわたって贈与を行うことで相続財産を大きく減らすことができます。ただし、近年の税制改正により相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、早めに対策を始めることが重要です。
③小規模宅地等の特例を活用する
小規模宅地等の特例は、相続税対策の中でも非常に効果の大きい制度です。この特例を利用すると、一定の条件を満たす土地の評価額を最大80%減額することができます。
代表的な適用ケースは次のとおりです。
| 土地の種類 | 減額割合 | 対象面積 |
| 自宅の土地 | 80%減額 | 330㎡まで |
| 賃貸不動産の土地 | 50%減額 | 200㎡まで |
例えば、評価額5,000万円の自宅の土地がある場合、この特例を使えば次のようになります。
5,000万円 × 20% = 評価額1,000万円
このように、土地の評価額を大きく下げることができるため、相続税額を大幅に減らすことが可能です。ただし、この特例を利用するためには次のような条件があります。
- 相続人がその土地に居住していること
- 相続後も一定期間住み続けること
- 申告期限まで土地を保有していること
条件を満たさない場合は特例が使えないため、事前に確認しておくことが重要です。
このように、相続税対策の基本となるのは次の3つです。
- 生命保険で非課税枠を活用する
- 生前贈与で相続財産を減らす
- 小規模宅地等の特例で土地評価を下げる
これらの制度は単独で使うだけでなく、組み合わせることでより大きな節税効果を生むことができます。相続税対策は早く始めるほど選択肢が広がるため、基礎控除を超える可能性がある場合は、早めに資産状況を整理して対策を検討することが大切です。
相続税対策を始めるベストタイミング
相続税対策は「相続が近くなってから考えるもの」と思われがちですが、実際にはできるだけ早く始めることが重要です。相続税対策の多くは時間をかけて効果を発揮する仕組みになっているため、直前に対策を始めても十分な節税効果が得られない場合があります。特に近年は税制改正によって短期間での節税が難しくなっており、早期の準備がより重要になっています。
例えば、生前贈与を利用した相続税対策は、毎年少しずつ財産を移転することで相続財産を減らす方法です。しかし贈与は長期間にわたって行うことで効果が大きくなるため、早く始めるほど有利になります。
さらに、近年の税制改正では相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算される仕組みになっています。つまり、亡くなる直前にまとめて贈与しても節税効果が小さくなってしまうため、計画的に対策を進める必要があります。
相続税対策を始めるタイミングの目安は、次のように考えるとわかりやすいでしょう。
| 年齢・状況 | 対策内容の例 |
| 40〜50代 | 資産の整理・相続人の確認 |
| 50〜60代 | 生前贈与の開始・資産移転の検討 |
| 60代以降 | 本格的な相続税対策・遺言作成 |
特に50代〜60代は、相続税対策を始める重要なタイミングとされています。この年代になると資産の状況がある程度固まり、将来の相続人も明確になるため、具体的な対策を立てやすくなるからです。
相続税対策を早めに始めることで得られるメリットには、次のようなものがあります。
- 生前贈与を長期間行える
- 相続税シミュレーションができる
- 不動産対策を計画的に進められる
- 家族間のトラブルを防ぎやすい
- 納税資金を準備しやすい
一方で、対策を後回しにすると次のような問題が起こる可能性があります。
- 短期間で有効な節税ができない
- 納税資金が不足する
- 不動産を急いで売却する必要がある
- 遺産分割で家族トラブルが起こる
また、相続税対策は「税金を減らすこと」だけが目的ではありません。実際には、次のような目的も含まれます。
- 財産の承継をスムーズにする
- 家族間のトラブルを防ぐ
- 納税資金を確保する
例えば、不動産が多い家庭では相続税の納税資金が不足することがあります。このような場合、生命保険を活用して納税資金を準備しておくことで、相続人が不動産を売却する必要がなくなることもあります。
このように、相続税対策は「相続直前の節税対策」ではなく、長期的な資産承継の計画として考えることが大切です。資産が基礎控除を超える可能性がある場合は、できるだけ早い段階から資産状況を整理し、専門家と相談しながら対策を進めることが望ましいでしょう。
相続税対策を始めるベストタイミングは、「まだ元気で判断力があるうち」です。早めに準備しておくことで、節税だけでなく、家族全体にとって安心できる相続を実現することができます。
相続税対策でよくある失敗と注意点

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相続税対策は早めに準備することで大きな効果が期待できますが、方法を誤ると節税どころか税負担が増えたり、家族トラブルにつながったりするケースもあります。特に自己判断で対策を進めてしまうと、税制のルールを正しく理解していないために失敗することがあります。ここでは、相続税対策でよくある失敗と注意点をわかりやすく解説します。
①相続直前に生前贈与を行う
相続税対策としてよく知られているのが生前贈与ですが、直前にまとめて贈与しても十分な節税効果が得られない場合があります。現在の税制では、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される仕組みになっているためです。つまり、亡くなる直前に贈与を行っても、結果として相続税の計算に含まれてしまう可能性があります。
生前贈与は次のようなポイントを意識することが重要です。
- できるだけ早い時期から計画的に行う
- 毎年の贈与記録を残しておく
- 贈与契約書を作成する
②不動産だけを残して納税資金を準備していない
相続財産の多くが不動産の場合、納税資金が不足するケースがあります。相続税は原則として現金で納付する必要があるため、現金が少ない家庭では不動産を売却して納税する必要が出てくることもあります。
| 資産構成 | 起こりやすい問題 |
| 不動産中心 | 納税資金が不足しやすい |
| 預貯金中心 | 納税資金は確保しやすい |
| 不動産+保険 | 納税資金を準備しやすい |
このような問題を防ぐためには、生命保険を活用して納税資金を準備するなどの対策を検討することが大切です。
③相続人同士のトラブルを考えていない
相続税対策というと「税金を減らすこと」に意識が向きがちですが、実際には遺産分割トラブルが大きな問題になるケースもあります。特に不動産が多い家庭では、誰が土地や建物を相続するかで意見が分かれることがあります。
よくあるトラブルの例としては次のようなものがあります。
- 長男が不動産を相続し、他の兄弟が不満を持つ
- 共有名義になり将来の売却が難しくなる
- 遺言書がなく相続人同士で争いになる
こうした問題を防ぐためには、遺言書の作成や家族での事前の話し合いが重要です。
④節税だけを目的に不動産を購入する
不動産を利用した節税は昔から行われてきましたが、近年は税務当局のチェックが厳しくなっています。特に相続直前に購入した不動産は、節税目的と判断された場合、実勢価格で評価される可能性があります。
| 対策方法 | リスク |
| 相続直前の不動産購入 | 評価が否認される可能性 |
| 長期保有の不動産 | 通常評価が適用されやすい |
| 投資目的の不動産 | 運用リスクもある |
そのため、不動産対策は節税だけでなく、資産運用としての価値も含めて慎重に検討する必要があります。
⑤専門家に相談せず自己判断で対策する
相続税の制度は非常に複雑で、家族構成や資産内容によって最適な対策は大きく変わります。インターネットの情報だけを参考にして自己判断で対策を進めると、思わぬ税負担が発生することもあります。
例えば次のようなケースがあります。
- 贈与の方法を誤り税務署に否認される
- 特例の適用条件を満たしていない
- 二次相続を考慮していない
このような失敗を防ぐためには、税理士などの専門家に相談しながら対策を進めることが重要です。
相続税対策を成功させるためのポイントをまとめると次のとおりです。
- 早めに対策を始める
- 資産の全体像を把握する
- 家族構成を踏まえて計画する
- 専門家のアドバイスを活用する
相続税対策は「節税」だけでなく、「資産承継」や「家族関係」も含めた総合的な準備です。誤った対策で後悔しないためにも、制度を正しく理解し、計画的に進めることが大切です。
相続税対策や資産設計は「早めに考えるほど有利」と言われますが、実際には「自分の家計の場合はどうすればいいのか分からない」という人も多いものです。新NISAや老後資金、相続対策などをまとめて考えるなら、まずは現在の資産状況を客観的に把握することが大切です。最近はオンラインで家計や資産形成の方向性をプロに診断してもらえるサービスもあり、将来のお金の不安を整理するきっかけとして利用する人が増えています。
資産形成・新NISA・家計診断など、お金のプロにオンラインで相談できるサービスを詳しく解説しています。
まとめ|相続税対策は「早期確認」と「長期的な資産設計」が重要
- 相続税対策が必要かどうかは「基礎控除」を基準に判断する
相続税はすべての家庭にかかるわけではありません。まずは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を確認し、正味の遺産額がこのラインを超える可能性があるかをチェックすることが第一歩です。 - 預貯金だけでなく不動産・保険・株式などすべての財産を把握する
相続税の対象は現金だけではなく、不動産・有価証券・死亡保険金・退職金など幅広い資産が含まれます。特に都市部の不動産は評価額が高くなるため、一般的な持ち家世帯でも課税対象になるケースがあります。 - 一次相続だけでなく「二次相続」まで考えることが重要
配偶者の税額軽減により一次相続では税負担が少なくても、二次相続で税額が増えるケースは多くあります。家族全体の税負担を抑えるには、長期的な視点で資産配分を考えることが大切です。 - 税制改正により「短期的な節税テクニック」は通用しにくくなっている
生前贈与の持ち戻し期間延長やタワーマンション評価の見直しなどにより、相続直前の対策は効果が出にくくなっています。現在の相続税対策は、長期的な資産移転を前提に考える必要があります。 - 生命保険・生前贈与・小規模宅地の特例が基本的な対策
相続税対策では、生命保険の非課税枠、生前贈与による資産移転、小規模宅地等の特例などを組み合わせることで、税負担を大きく軽減できる可能性があります。 - 不動産が多い家庭は納税資金の準備も重要
相続税は原則として現金で納付する必要があります。不動産中心の資産構成の場合、納税資金不足による売却を防ぐため、生命保険などを活用した資金準備を検討することが重要です。 - 相続税対策は「できるだけ早く始める」ことが最大のポイント
生前贈与など多くの対策は時間をかけるほど効果が大きくなります。40〜60代のうちに資産状況を整理し、早期に計画を立てることで選択肢を広げることができます。 - 自己判断だけで進めず、必要に応じて専門家に相談する
相続税の制度は複雑で、資産内容や家族構成によって最適な対策は異なります。税理士など専門家と相談しながら計画的に進めることで、税負担の軽減と円滑な資産承継を実現しやすくなります。


