「ペアローンは節税になる」と聞いたことはあっても、実際にどれくらい税金が減るのか、単独ローンと比べて本当に有利なのかまでは分からない…そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
共働き世帯が増えるなか、住宅購入時にペアローンを検討する人は年々増えています。しかし、住宅ローン控除を夫婦で利用できるメリットがある一方で、借入割合の決め方や贈与税のリスク、将来のライフプランへの影響など、事前に理解しておくべきポイントも少なくありません。制度を正しく理解しないまま選択してしまうと、本来得られるはずの節税効果を十分に活かせない可能性もあります。
この記事では、ペアローンの仕組みや住宅ローン控除による節税の考え方を整理しながら、単独ローンとの違い、具体的なシミュレーション、借入割合の決め方、注意すべき税務リスクまでをわかりやすく解説します。
住宅ローンを検討している共働き世帯が「本当に自分たちに合った借り方」を判断できるようポイントを整理しました。
※本記事に掲載している情報は、2026年3月時点の税制および住宅ローン控除制度に基づいた一般的な解説です。実際の適用条件や控除額は、お客様の年収、家族構成、購入される物件の性能、借入条件等により異なります。また、税制改正等により内容が変更される場合もあります。具体的な節税額の試算やお手続きの詳細については、所轄の税務署、税理士、または借入先の金融機関へ必ずご確認ください。
ペアローンとは?仕組みと単独ローンとの違い
ペアローンとは、1つの住宅(1つの物件)に対して、夫婦それぞれが「主債務者」として別々に住宅ローンを契約する借り方です。住宅ローンが2本になる点が最大の特徴で、夫も妻もそれぞれ審査を受け、契約者として返済義務を負います。共働き世帯で「希望の借入額に届かない」「住宅ローン控除を夫婦それぞれで使いたい」と考えるときに、候補に挙がりやすい方法です。
一方で、単独ローンは夫または妻のどちらか1人が主債務者となり、ローンは1本です。控除や手続きがシンプルで管理しやすい反面、借入額の上限や住宅ローン控除の上限が「1人分」に寄りやすく、世帯としての最適化が難しいことがあります。
ペアローンの基本構造
ペアローンは「ローンが2本」「名義も原則共有」「返済も原則それぞれ」という形になります。実務上は、次のセットで考えると理解しやすいです。
- ローン契約:夫1本+妻1本(合計2本)
- 債務者:夫も妻も主債務者
- 名義(持分):原則として借入・負担割合に合わせて共有名義で登記
- 返済:夫ローンは夫、妻ローンは妻が返済(口座引落しを分けるケースが多い)
なお、金融機関や商品によって細部は異なりますが、基本の考え方は「それぞれが借り、各自が返す」です。この構造が、住宅ローン控除を夫婦それぞれで使える理由にもつながります(控除の詳細は別章で扱うと理解が深まります)。
単独ローンとの違いを早見表で整理
「何がどう違うか」を一度表で俯瞰すると、比較軸が整理できます。
| 比較項目 | ペアローン | 単独ローン |
| ローン本数 | 2本(夫・妻それぞれ契約) | 1本(夫または妻が契約) |
| 債務者 | 夫も妻も主債務者 | 1人のみ主債務者 |
| 住宅ローン控除 | 夫婦それぞれで適用可能(条件を満たす前提) | 原則1人分のみ |
| 審査 | 夫・妻それぞれで審査(片方が通らないと組めない場合あり) | 主債務者のみ審査 |
| 諸費用 | 契約が2件分になり、手数料・印紙等が増える傾向 | 契約が1件分で比較的抑えやすい |
| 団信(一般的な団信) | 夫・妻それぞれ加入、どちらかに万一でも「その人の分」だけ完済されやすい | 主債務者に万一があるとローン全体が完済されやすい |
| 将来の変更(離婚・転職・退職など) | 名義・返済・借換えの調整が難しくなりやすい | 比較的シンプルに調整しやすい |
結論として、ペアローンは「控除を含む最適化」と「借入額の拡張」に強い一方で、手数料や将来変化への耐性は単独ローンより落ちやすい、という特徴があります。
ペアローンが選ばれやすい典型ケース
実務目線では、ペアローンが有力になりやすいのは次のような場面です。
- 物件価格が高く、単独ローンだと希望額に届きにくい
- 夫婦ともに安定収入があり、住宅ローン控除を2人分使い切れる見込みがある
- 世帯としてキャッシュフロー(手取り)を最大化したい
- 将来も共働きを継続する計画で、返済の分担が現実的
逆に「将来どちらかが退職・育休で収入が大きく落ちる可能性が高い」「離婚リスクを含めて名義整理が不安」「手続きと管理をできるだけシンプルにしたい」場合は、単独ローンの方が安心できることもあります。
落とし穴になりやすいのは「登記(持分)と返済」のズレ
ペアローンを検討する際、初心者が最もつまずきやすいのが「登記の持分割合」と「実際の返済負担」がズレるケースです。名義(持分)に対して、実質的に片方が多く負担していると、税務上「贈与」と見なされる可能性があります。節税のつもりが、別の税負担につながるリスクがあるため、ペアローンでは特に注意が必要です。
- 借入割合(夫6:妻4)に対して、登記持分も原則(夫6:妻4)に合わせる
- 返済の肩代わりが常態化しないよう、家計設計と引落し口座を整える
- 繰上返済の原資(誰の貯蓄か)も含めて整合性を取る
この「整合性」は、節税の効果を最大化する以前に、余計なトラブルを避けるための土台です。次の章以降で、住宅ローン控除の仕組みとシミュレーションを見れば、なぜこの土台が重要になるのかが具体的に理解しやすくなります。
ペアローン 節税の仕組み|住宅ローン控除が夫婦それぞれ使える理由

画像はイメージです
ペアローンが節税につながる最大の理由は、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」を夫婦それぞれが利用できる点にあります。単独ローンの場合、控除を受けられるのはローン契約者である1人だけですが、ペアローンでは夫と妻がそれぞれ主債務者としてローン契約を結ぶため、控除の適用対象も2人分になります。結果として、世帯全体で受けられる減税額が大きくなる可能性があります。
住宅ローン控除は、住宅購入者の負担を軽減するための税制優遇制度です。毎年の年末時点の住宅ローン残高の一定割合が所得税や住民税から差し引かれる仕組みになっています。現在の制度では、年末残高の0.7%が控除され、最長13年間にわたって減税効果が続きます。
住宅ローン控除の基本ルール
住宅ローン控除の仕組みを理解すると、なぜペアローンが節税につながるのかが明確になります。主なルールは次の通りです。
- 年末時点の住宅ローン残高の0.7%が控除される
- 控除期間は最長13年間(中古住宅は10年)
- 所得税から控除しきれない場合は住民税からも一部控除される
- 借入限度額は住宅の性能(省エネ基準など)によって異なる
つまり、住宅ローンの残高が大きいほど控除額も増えます。ただし、借入限度額や納めている税額以上には控除できないため、控除枠を使い切るための設計が重要になります。
単独ローンとペアローンの控除の違い
単独ローンとペアローンでは、住宅ローン控除の対象者が異なります。この違いが、節税効果の差につながります。
| 比較項目 | 単独ローン | ペアローン |
| 控除対象 | 主債務者1人 | 夫婦それぞれ |
| 控除枠 | 1人分の借入限度額 | 2人分の借入限度額 |
| 節税効果 | 1人分の控除のみ | 世帯全体で控除が増える可能性 |
| 所得税・住民税控除 | 1人の税額範囲内 | 夫婦それぞれの税額から控除 |
例えば、住宅価格が6,000万円の場合を考えてみましょう。単独ローンでは、控除対象となる借入額が上限に達してしまうと、それ以上のローン残高があっても控除の対象になりません。しかしペアローンなら、夫婦それぞれの控除枠が使えるため、世帯全体で控除対象となる借入額が大きくなります。
ペアローンで控除が増える理由
ペアローンで節税効果が高くなる理由は、大きく3つあります。
- 夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になる
- 借入限度額の枠を夫婦で分けて使える
- 所得税・住民税の控除枠を世帯で分散できる
特に重要なのが「所得税の枠」です。住宅ローン控除は、実際に支払っている税金の範囲内でしか控除できません。単独ローンで控除額が大きすぎる場合、税額を超えた部分は控除しきれず消えてしまいます。一方、ペアローンなら夫婦それぞれの所得税から控除できるため、控除枠を無駄なく使える可能性が高くなります。
共働き世帯ほど節税効果が大きくなる
ペアローンの節税メリットは、共働き世帯ほど大きくなります。理由は、夫婦それぞれに所得税が発生しているためです。住宅ローン控除は税額控除のため、納税額があるほどメリットを受けやすい仕組みになっています。
| 世帯タイプ | 控除の使い方 | 節税効果 |
| 単独ローン | 1人の税金から控除 | 控除枠を使い切れない場合あり |
| 共働き+ペアローン | 夫婦それぞれの税金から控除 | 控除枠をフル活用しやすい |
このように、ペアローンは住宅ローン控除を「2人分」使える点が最大の節税ポイントです。ただし、持分割合や返済割合を間違えると贈与税の問題が発生する可能性もあります。そのため、単純に節税額だけで判断するのではなく、収入バランスやライフプランも踏まえて設計することが重要です。
住宅ローン控除の基本ルール|控除率・控除期間・借入限度額
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅購入者の税負担を軽減するために設けられた代表的な税制優遇制度です。住宅ローンを利用して自宅を購入・新築・増改築した場合、一定の条件を満たせば「年末時点のローン残高の一定割合」が所得税や住民税から差し引かれます。住宅ローン控除の仕組みを理解しておくことは、ペアローンによる節税効果を正しく把握するうえでも重要です。
ここでは、住宅ローン控除の基本となる「控除率」「控除期間」「借入限度額」の3つのルールを整理します。なお、以下は2026年(令和8年)以降に入居した場合の主なルールです(令和8年度税制改正大綱に基づく)。制度は改正される可能性があるため、最新情報は国税庁や財務省の公式サイトで確認してください。
控除率:住宅ローン残高の0.7%が税金から控除
住宅ローン控除では、年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除されます。控除しきれなかった場合は、一定額を上限として住民税からも控除される仕組みです。
例えば、年末の住宅ローン残高が4,000万円の場合、1年間の控除額は次のようになります。
| 年末ローン残高 | 控除率 | 年間控除額 |
| 4,000万円 | 0.7% | 28万円 |
ただし、実際に控除される金額は「支払っている所得税・住民税の範囲内」に限られます。納税額を超える控除は受けられないため、所得水準によっては控除額を使い切れないケースもあります。
控除期間:最長13年間の減税が可能
住宅ローン控除は、一定期間にわたって毎年適用されます。新築住宅の場合は最長13年間が基本です。中古住宅(既存住宅)の場合、省エネ性能の高い住宅は13年に拡充され、それ以外は10年です。
この期間中、毎年の年末ローン残高を基準に控除額が計算されます。ローン残高が減るにつれて控除額も少しずつ減っていく仕組みです。
| 住宅の種類 | 控除期間(新築) | 控除期間(中古) |
| 認定長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅など高性能住宅 | 13年間 | 13年間(拡充) |
| 省エネ基準適合住宅 | 13年間(2026-2027年入居の場合など経過措置あり) | 13年間(拡充) |
| その他の住宅 | 対象外または10年(経過措置) | 10年間 |
控除期間が長いほど減税効果の総額は大きくなります。そのため、住宅購入のタイミングや住宅の種類によって節税効果が変わる点も理解しておく必要があります。
借入限度額:住宅性能によって上限が変わる
住宅ローン控除では、控除対象となる借入額に上限が設けられています。この上限は住宅の性能(省エネ性能など)によって異なり、子育て世帯・若者夫婦世帯の場合に上乗せ措置があります。性能の高い住宅ほど上限額が高く設定されており、より大きな控除を受けられる可能性があります。
2026年以降入居の場合の主な借入限度額(新築住宅の例、1人あたり)は以下の通りです(子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せを括弧内に記載)。
| 住宅の種類 | 借入限度額(1人あたり、一般世帯) | 借入限度額(子育て世帯・若者夫婦世帯) |
| 認定長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円(2026-2027年入居の場合など) | 3,000万円 |
| その他の住宅 | 対象外または2,000万円(経過措置) | 対象外または上乗せなし |
例えば、ZEH水準の省エネ住宅であれば、一般世帯で最大3,500万円までが控除計算の対象になります。これを超える借入額があっても、控除計算には含まれません。中古住宅の場合も同様に性能に応じて上限が設定され、高性能住宅は拡充されています。
住宅ローン控除の計算イメージ
住宅ローン控除の基本計算は次の式で求められます。
- 年末ローン残高 × 控除率(0.7%)(限度額を超えない範囲)
例えば、年末ローン残高が3,500万円の場合(限度額内)の通りです。
| 年末ローン残高 | 控除率 | 年間控除額 |
| 3,500万円 | 0.7% | 24.5万円 |
この控除が最大13年間続くため、総額では数百万円規模の節税効果になるケースもあります。特に共働き世帯では、ペアローンを利用して控除を夫婦それぞれが受けることで、世帯全体の節税効果が大きくなる可能性があります。
次の章では、単独ローンとペアローンで実際にどれくらい控除額に差が出るのか、具体的なシミュレーションを使って比較していきます。
単独ローンとペアローンの控除額差をシミュレーションで比較
ペアローンの節税メリットを理解するためには、単独ローンと比較してどのくらい住宅ローン控除額に差が出るのかを具体的に確認することが重要です。ここでは、実際の住宅購入を想定したシミュレーションを使いながら、単独ローンとペアローンの控除額の違いをわかりやすく解説します。
住宅ローン控除は「年末のローン残高 × 控除率(0.7%)」で計算されます。ただし、控除対象となる借入額には上限があるため、借入額が大きいほど単独ローンでは控除枠を使い切れないケースが出てきます。ペアローンでは夫婦それぞれに控除枠があるため、この差が節税効果として表れます。
シミュレーション条件
まずは比較しやすいよう、次の条件でシミュレーションを行います。2026年以降入居の新築住宅(ZEH水準省エネ住宅)を想定し、一般世帯の場合の上限を基準としています。
- 住宅価格:6,000万円
- 住宅ローン借入額:6,000万円
- 控除率:0.7%
- 控除期間:13年間
- 住宅ローン控除対象上限:3,500万円(1人あたり、ZEH水準省エネ住宅の場合。一般世帯。子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円まで上乗せ可能)
- 夫婦の年収:それぞれ600万円(共働き、所得税額で控除しきれる範囲を想定)
※借入限度額は住宅性能・世帯状況(子育て世帯等)により異なります。子育て世帯・若者夫婦世帯(19歳未満の子を有する、または夫婦いずれかが40歳未満)の場合、上限が上乗せされ節税効果が増します。詳細は国税庁で確認してください。
単独ローンの場合
単独ローンでは、夫(または妻)1人が住宅ローンを借り入れます。そのため住宅ローン控除の対象も1人分だけになります。
| 項目 | 内容 |
| 借入額 | 6,000万円 |
| 控除対象上限 | 3,500万円 |
| 年間控除額 | 24.5万円(3,500万円 × 0.7%) |
| 13年間合計 | 約318.5万円 |
この場合、借入額が6,000万円あっても控除対象になるのは3,500万円までです。つまり、ローン残高のすべてが控除計算に使われるわけではありません。そのため、控除額は年間24.5万円程度にとどまります。
ペアローンの場合
次に、同じ6,000万円を夫婦で3,000万円ずつ借りるペアローンを想定します。この場合、夫と妻それぞれが住宅ローン控除を受けられるため、控除枠も2人分使えます(各3,000万円は上限3,500万円以内)。
| 項目 | 夫 | 妻 |
| 借入額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 控除対象額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 年間控除額 | 21万円 | 21万円 |
この場合の世帯全体の控除額は次の通りです。
| 項目 | 金額 |
| 年間控除額(夫婦合計) | 42万円 |
| 13年間合計 | 約546万円 |
単独ローンとペアローンの控除額差
ここまでのシミュレーションをまとめると、次のような差が生まれます。
| 比較項目 | 単独ローン | ペアローン |
| 年間控除額 | 24.5万円 | 42万円 |
| 13年間控除総額 | 約318.5万円 | 約546万円 |
| 控除差額 | 約227.5万円の差 | |
このシミュレーションでは、ペアローンの方が約227.5万円も多く節税できる結果になりました。子育て世帯・若者夫婦世帯で上限が上乗せされると差はさらに拡大します。住宅価格が高いほど、この差はさらに大きくなる可能性があります。
控除差が生まれる理由
単独ローンとペアローンでこれほど差が出る理由は、主に次の2つです。
- 住宅ローン控除の借入上限を夫婦2人分使える
- 所得税・住民税の控除枠を夫婦それぞれで活用できる
特に物件価格が高い場合、単独ローンでは控除対象の上限にすぐ到達してしまいます。ペアローンなら控除枠を分散できるため、世帯全体の減税効果を最大化できるのが特徴です。
ただし、ペアローンには諸費用の増加や贈与税リスクなどの注意点もあります。次の章では、ペアローンで控除を最大化するための借入割合の決め方について解説します。
ペアローン 節税を最大化する借入割合の決め方

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ペアローンで節税効果を最大化するためには、「夫婦それぞれの借入割合」を適切に設定することが重要です。住宅ローン控除はそれぞれのローン残高に応じて計算されるため、借入割合の決め方によって世帯全体の控除額が変わる可能性があります。また、借入割合は住宅の持分割合とも関係するため、税務上のトラブルを避けるためにも慎重に設計する必要があります。
基本的な考え方としては、単純に「半分ずつ」にするのではなく、夫婦の年収や税負担、将来のライフプランを考慮して決めることが大切です。
借入割合を決める3つの基本ポイント
ペアローンの借入割合を決める際には、主に次の3つのポイントを意識すると節税効果を最大化しやすくなります。
- 夫婦それぞれの所得税額に合わせる
- 住宅ローン控除の借入限度額を意識する
- 返済負担率(年収に対する返済割合)を考慮する
住宅ローン控除は「税額控除」であるため、支払っている税金の範囲内でしか控除できません。つまり、所得税を多く払っている人ほど控除枠を使いやすくなります。そのため、年収が高い方がやや多めに借入する設計が現実的なケースもあります。
借入割合の代表的なパターン
実際の住宅購入では、次のような借入割合のパターンがよく検討されます。
| 借入割合 | 向いているケース | 特徴 |
| 50:50 | 夫婦の年収がほぼ同じ | 控除枠を均等に使いやすい |
| 60:40 | 年収差がある夫婦 | 高所得側の控除枠を有効活用 |
| 70:30 | 収入差が大きい場合 | 返済負担を現実的に調整 |
例えば、夫の年収が600万円、妻の年収が300万円の場合、完全な50:50の借入は返済負担が偏る可能性があります。そのため、60:40や70:30などの割合に調整することで、現実的な返済計画と節税効果のバランスを取ることができます。
借入割合と持分割合は必ず一致させる
ペアローンでは、住宅の「持分割合」と「借入割合」を一致させることが原則です。もしこの2つが一致していない場合、税務上は贈与と判断される可能性があります。
| 借入割合 | 登記持分 | 税務リスク |
| 夫60%・妻40% | 夫60%・妻40% | 問題なし |
| 夫100%・妻0% | 夫50%・妻50% | 妻への贈与と判断される可能性 |
例えば、夫が全額返済しているにもかかわらず妻の持分が大きい場合、その差額は「夫から妻への贈与」とみなされる可能性があります。こうしたリスクを避けるためにも、ローン割合と登記割合は一致させておくことが重要です。
収入バランスに合わせた借入設計が重要
ペアローンは節税メリットが大きい一方で、返済計画を誤ると家計に大きな負担がかかる可能性があります。そのため、次のような観点で借入割合を決めることが大切です。
- 現在の年収バランス
- 将来の出産・育休の可能性
- 転職やキャリア変更の予定
- 住宅ローン控除を使い切れるか
例えば、妻が将来育休を取得する可能性が高い場合、妻の借入割合を高くしすぎると返済負担が重くなる可能性があります。その場合は、夫の借入割合をやや多くするなど、ライフプランに合わせて調整することが重要です。
このように、ペアローンの借入割合は単純に「半分ずつ」にするのではなく、税金・収入・将来の働き方を総合的に考えて決める必要があります。次の章では、ペアローンを検討する際に必ず理解しておきたい「贈与税の注意点」について詳しく解説します。
ペアローンで注意したい贈与税の落とし穴
ペアローンは住宅ローン控除を夫婦それぞれで利用できるため、節税効果が期待できる仕組みです。しかし、設計を誤ると「贈与税」が発生する可能性がある点には注意が必要です。住宅購入では金額が大きいため、意図せず贈与とみなされると数十万円〜数百万円の税負担になるケースもあります。ペアローンを検討する際は、贈与税が発生する代表的なケースを理解しておくことが重要です。
贈与税とは
贈与税とは、個人から財産をもらった場合に課税される税金です。年間110万円までの基礎控除がありますが、それを超える贈与があった場合は課税対象になります。住宅購入では、資金負担と不動産の持分割合が一致していないと「実質的な贈与」と判断されることがあります。
持分割合と借入割合が一致していないケース
ペアローンでは、住宅の持分割合と借入割合を一致させることが基本です。この2つが一致していない場合、税務上は一方がもう一方に資金を贈与したと判断される可能性があります。
| 借入割合 | 登記持分 | 税務判断 |
| 夫60%・妻40% | 夫60%・妻40% | 問題なし |
| 夫100% | 夫50%・妻50% | 妻への贈与と判断される可能性 |
例えば、住宅価格が6,000万円で夫が全額を支払っているにもかかわらず、登記が夫50%・妻50%となっている場合、妻が3,000万円分の財産を受け取ったとみなされる可能性があります。この差額は贈与と判断され、贈与税の対象になることがあります。
ローン返済を肩代わりするケース
ペアローンでは、それぞれが自分のローンを返済することが前提です。しかし、どちらかが相手のローンを負担している場合、贈与とみなされる可能性があります。
- 妻のローンを夫が実質的に返済している
- 夫の口座から妻のローンが引き落とされている
- 長期間にわたり一方が返済を肩代わりしている
例えば、妻が育休などで収入が減少し、夫が妻のローンを代わりに返済している場合、その金額が年間110万円を超えると贈与税の対象になる可能性があります。
繰上返済の資金にも注意
繰上返済をする際も、資金の出どころによっては贈与税の問題が発生する場合があります。
| 繰上返済の資金 | 税務上の扱い |
| 自分の貯金で自分のローンを返済 | 問題なし |
| 夫の貯金で妻のローンを返済 | 妻への贈与とみなされる可能性 |
特に住宅ローンの繰上返済は数百万円単位になることが多いため、資金の出どころを整理しておくことが重要です。
贈与税を避けるためのポイント
ペアローンで贈与税のトラブルを避けるためには、次のポイントを意識することが大切です。
- 住宅の持分割合と借入割合を一致させる
- ローンは原則として各自が返済する
- 繰上返済の資金の出どころを明確にする
- 家計管理とローン返済口座を分けておく
ペアローンは節税メリットが大きい仕組みですが、税務ルールを理解せずに設計すると想定外の税負担が発生する可能性があります。住宅購入は金額が大きいからこそ、借入割合・持分割合・返済方法の整合性をしっかり確認しておくことが重要です。
次の章では、ペアローンを検討する際に必ず理解しておきたい「デメリットやリスク」について解説します。
ペアローンのデメリット|諸費用・団信・ライフプランのリスク
ペアローンは住宅ローン控除を夫婦それぞれが利用できるため、節税メリットが期待できる借入方法です。しかし、その一方で単独ローンにはないデメリットも存在します。特に「諸費用の増加」「団体信用生命保険(団信)の仕組み」「ライフプランの変化によるリスク」は、事前に理解しておくべき重要なポイントです。メリットだけで判断すると、将来的に家計に大きな負担が生じる可能性もあるため、慎重に検討することが大切です。
ローン契約が2本になるため諸費用が増える
ペアローンでは夫婦それぞれが住宅ローン契約を結ぶため、契約に関する諸費用が2件分発生するケースが一般的です。金融機関によって差はありますが、単独ローンよりも初期費用が高くなる傾向があります。
| 費用項目 | 単独ローン | ペアローン |
| 融資手数料 | 1契約分 | 2契約分 |
| 印紙税 | 1契約分 | 2契約分 |
| 登記費用 | 通常 | 共有名義でやや増える |
| 司法書士報酬 | 1件分 | 2件分になる場合あり |
これらの費用は金融機関によって異なりますが、数万円から十数万円程度の差が生じることもあります。住宅購入時は物件価格以外にも多くの費用が発生するため、事前に総額を把握しておくことが重要です。
団信はそれぞれのローンにしか適用されない
住宅ローンを利用する際、多くの金融機関では団体信用生命保険(団信)への加入が条件になります。団信は、契約者が死亡または高度障害状態になった場合に住宅ローン残高が保険で返済される仕組みです。
ただし、ペアローンの場合はそれぞれが別のローン契約となるため、万が一の際に保険で完済されるのは「その人のローン部分のみ」です。
| ケース | 単独ローン | ペアローン |
| 主債務者が死亡 | ローン全額が完済 | 亡くなった人のローンのみ完済 |
| 配偶者のローン | なし | 残りのローンは返済継続 |
例えば、夫3,000万円・妻3,000万円のペアローンを組んでいる場合、夫に万が一のことがあれば夫の3,000万円は保険で完済されます。しかし、妻の3,000万円のローンはそのまま残ります。このようなリスクを軽減するために、金融機関によっては「連生団信(夫婦連生型団信)」を選べる場合もあります。
ライフプランの変化による返済リスク
ペアローンは夫婦の収入を前提としてローンを組むため、ライフプランが変化した場合に返済負担が重くなる可能性があります。特に次のようなケースは注意が必要です。
- 出産や育児による収入減少
- 転職や退職による収入の変化
- 病気やケガによる就労困難
- 離婚による住宅ローンの整理
例えば、妻が育休に入り収入が大きく減少した場合、妻名義のローン返済が家計の負担になる可能性があります。また、住宅ローン控除は所得税が発生している人しか利用できないため、収入が減ると控除メリットも小さくなる点に注意が必要です。
離婚時の手続きが複雑になる
ペアローンは共有名義の住宅であることが多いため、離婚した場合の手続きが複雑になるケースがあります。住宅を売却する場合や名義変更を行う場合には、金融機関の承認が必要になることもあります。
| 状況 | 対応方法 |
| 住宅を売却する | 夫婦双方の同意が必要 |
| どちらかが住み続ける | 単独ローンへの借り換えが必要になる場合あり |
| 名義変更 | 金融機関の審査が必要 |
住宅ローンは長期間にわたる契約であるため、将来の生活の変化も想定しておくことが大切です。
メリットとリスクのバランスで判断することが大切
ペアローンは住宅ローン控除を最大限活用できるため、共働き世帯にとって魅力的な選択肢です。しかし、契約が2本になることによるコスト増加や、ライフプランの変化による返済リスクなども考慮する必要があります。
住宅ローンは数十年続く長期契約です。目先の節税メリットだけでなく、「将来の働き方」「家計の安定性」「万が一のリスク」まで含めて総合的に判断することが重要です。次の章では、ペアローンが向いている夫婦と向いていない夫婦の特徴について解説します。
ペアローンが向いている夫婦・向いていない夫婦

画像はイメージです
ペアローンは、住宅ローン控除を夫婦それぞれで活用できるため節税メリットが期待できる借入方法です。しかし、すべての家庭にとって最適とは限りません。収入状況やライフプランによっては、単独ローンの方がリスクを抑えられるケースもあります。ここでは、ペアローンが向いている夫婦と向いていない夫婦の特徴を整理します。
ペアローンが向いている夫婦
次のような条件に当てはまる夫婦は、ペアローンのメリットを活かしやすい傾向があります。
- 夫婦ともに安定した収入がある
- 共働きを長期間続ける予定がある
- 住宅価格が高く、単独ローンでは借入額が不足する
- 住宅ローン控除を夫婦それぞれで活用できる
- 将来の返済計画を夫婦で共有できている
特に共働き世帯で住宅価格が高い場合、単独ローンでは住宅ローン控除の上限に達してしまうことがあります。その点、ペアローンなら夫婦それぞれが控除を受けられるため、世帯全体の節税効果を最大化しやすくなります。また、収入を合算して審査されるため、借入可能額が増えやすい点もメリットです。
ペアローンが向いていない夫婦
一方で、次のような状況の夫婦はペアローンのリスクが大きくなる可能性があります。
- どちらかが近いうちに退職・育休・時短勤務を予定している
- 収入差が大きく、片方の返済負担が不安定
- 住宅ローン控除を使い切れない可能性がある
- ライフプランがまだ固まっていない
- 将来の家計変動に不安がある
例えば、妻が出産や育児で収入が大きく減少する可能性が高い場合、妻のローン返済が負担になることがあります。また、収入が低い側は所得税が少ないため、住宅ローン控除を十分に活用できないケースもあります。
向いている夫婦・向いていない夫婦の比較
ペアローンの適性を整理すると、次のような違いがあります。
| 項目 | 向いている夫婦 | 向いていない夫婦 |
| 収入状況 | 夫婦ともに安定収入 | どちらかの収入が不安定 |
| 働き方 | 共働きを継続予定 | 退職・育休予定がある |
| 住宅価格 | 高額物件を購入予定 | 比較的価格が低い住宅 |
| 節税メリット | 住宅ローン控除を夫婦で活用できる | 控除枠を使い切れない可能性 |
| 家計管理 | 夫婦で返済計画を共有できる | 返済負担の偏りが大きい |
ライフプランを踏まえて判断することが重要
住宅ローンは一般的に20年〜35年と長期間にわたる契約です。そのため、現在の収入だけで判断するのではなく、将来のライフプランも含めて検討することが重要です。
- 出産・育児による収入変化
- 転職やキャリアアップ
- 子どもの教育費
- 老後資金の準備
ペアローンは節税効果が大きい一方で、夫婦それぞれがローン契約者になるため責任も大きくなります。住宅ローン控除のメリットだけに注目するのではなく、「無理のない返済計画」と「将来の生活設計」のバランスを考えて判断することが大切です。
次の章では、ペアローンで住宅ローン控除を受ける際に必要となる手続きについて解説します。
ペアローンで住宅ローン控除を受ける手続き
ペアローンで住宅ローン控除を受ける場合、夫婦それぞれが控除の対象者となるため、手続きも「2人分」必要になります。特に初年度は確定申告が必須となるため、必要書類や申請の流れを事前に理解しておくことが大切です。ここでは、ペアローンで住宅ローン控除を受けるための基本条件と手続きの流れをわかりやすく解説します。
住宅ローン控除を受けるための主な条件
住宅ローン控除を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。ペアローンの場合は、夫婦それぞれがこの条件を満たしていることが重要です。
- 自分が所有する住宅に居住していること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
- 住宅の床面積が50㎡以上であること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
- 住宅の持分を登記していること
ペアローンでは夫婦それぞれがローン契約者となるため、どちらも住宅の持分を持っていることが基本条件になります。
初年度は確定申告が必要
住宅ローン控除を受ける最初の年は、会社員であっても確定申告を行う必要があります。これはペアローンでも同じで、夫婦それぞれが確定申告を行わなければなりません。
| 手続き | 内容 |
| 初年度 | 夫婦それぞれが確定申告を行う |
| 2年目以降(会社員) | 年末調整で控除が適用される |
| 自営業者 | 毎年確定申告が必要 |
初年度の確定申告を行うことで、翌年以降は会社員の場合、勤務先の年末調整で住宅ローン控除が適用されるようになります。
確定申告で必要な書類
住宅ローン控除の申請では、いくつかの書類を準備する必要があります。夫婦それぞれの申請になるため、書類も2人分用意する必要があります。
| 必要書類 | 内容 |
| 住宅ローン残高証明書 | 金融機関が発行するローン残高証明書 |
| 登記事項証明書 | 住宅の所有者と持分割合を確認する書類 |
| 売買契約書または工事請負契約書 | 住宅購入価格を証明する書類 |
| 源泉徴収票 | 会社員の場合に必要 |
| 本人確認書類 | マイナンバーカードなど |
住宅ローン残高証明書は毎年金融機関から送付されるため、確定申告や年末調整の際に提出します。
手続きの基本的な流れ
住宅ローン控除の手続きは次の流れで進みます。
- 住宅購入・入居
- 金融機関から住宅ローン残高証明書が届く
- 翌年2月〜3月に確定申告を行う
- 所得税の還付を受ける
- 翌年以降は年末調整で控除適用
確定申告を行うことで、払いすぎた所得税が還付されます。また、控除しきれない場合は住民税からも一定額が控除される仕組みになっています。
ペアローンの場合の注意点
ペアローンで住宅ローン控除を受ける際は、次の点に注意しましょう。
- 夫婦それぞれが確定申告を行う必要がある
- 住宅の持分割合と借入割合を一致させる
- 夫婦それぞれが住宅に居住している必要がある
- 住宅ローン控除の適用条件を双方が満たしていること
これらの条件を満たしていない場合、住宅ローン控除を受けられない可能性があります。
このように、ペアローンで住宅ローン控除を受ける手続き自体は特別難しいものではありません。ただし、夫婦それぞれが申請者となるため、書類準備や確定申告を忘れないよう注意が必要です。最後に、これまで解説してきた内容をまとめながら、ペアローンが本当に節税につながるのかを整理していきます。
住宅ローンは借入額や借入割合によって節税効果が大きく変わります。
ペアローンが本当に有利かどうかは、年収・住宅価格・借入条件によって異なります。住宅ローン控除を最大限活用するためには、事前にシミュレーションを行い、自分たちに合った借入方法を確認しておくことが重要です。
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この記事のまとめ

画像はイメージです
- ペアローンとは、夫婦それぞれが主債務者として住宅ローンを契約する仕組みで、住宅ローン控除を夫婦それぞれで利用できる点が大きな特徴です。共働き世帯では控除枠を2人分使えるため、単独ローンより世帯全体の節税効果が大きくなる可能性があります。
- 住宅ローン控除は、年末ローン残高の0.7%が所得税・住民税から控除される制度で、最長13年間適用されます。ただし控除額は借入限度額や納税額の範囲内に限られるため、世帯の収入状況に合わせた設計が重要です。
- シミュレーションでは、6,000万円の住宅を購入した場合、単独ローンよりペアローンの方が約227万円以上多く節税できるケースもあります。特に住宅価格が高い場合や共働き世帯では、控除枠を有効活用しやすくなります。
- 節税効果を最大化するためには、借入割合の設計が重要です。夫婦それぞれの所得税額、住宅ローン控除の借入上限、返済負担率を考慮し、50:50や60:40など収入バランスに合った割合でローンを組むことがポイントになります。
- ペアローンでは「借入割合」と「住宅の持分割合」を一致させることが重要です。これが一致していない場合、資金負担の差額が贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性があるため注意が必要です。
- また、ローン契約が2本になることで、融資手数料・印紙税・司法書士報酬などの諸費用が増える傾向があります。団体信用生命保険(団信)もそれぞれのローンにしか適用されないため、万一の際には残りのローンが残る点も理解しておく必要があります。
- 出産・育休・転職・離婚など、将来のライフプランの変化によって返済負担や控除メリットが変わる可能性もあります。住宅ローンは長期契約であるため、現在の収入だけでなく将来の働き方や家計の安定性も考慮して判断することが大切です。
- ペアローンは、共働きで安定収入があり住宅ローン控除を夫婦で活用できる世帯に向いています。一方、収入変動が大きい場合や控除枠を使い切れない場合は、単独ローンの方がシンプルでリスクを抑えられるケースもあります。
- 最終的には、節税額だけで判断するのではなく、「住宅価格」「収入バランス」「将来のライフプラン」「税務リスク」まで含めて総合的に比較することが重要です。住宅ローンの設計を慎重に行うことで、家計の負担を抑えながら無理のない住まい購入につなげることができます。


